変わる世界・・・でも気づくのは女神だけ・・・
その日、六花とエンデはそろって朝から、地下にこもり、
魔法陣の構築に取り掛かっていた。
「さてと、術式の用意はいいか?」
「空間の増加度を増やすというか大きくするんだよね?」
「そう、空間に対して時間の成長度合いが大きいから、
向こうが1時間分の空間の成長をする間に、4時間でその分の成長をする。
ということは空間はその4時間に圧縮しているということになる。
そこで、だ。」
「空間の成長を私たちの世界と同じになるように空間の増加度を増やす、
のよね。」
「その通り、値はすでに算出済みだ。また、急に増やすと世界に負荷がかかり、
亀裂が入る可能性がある。修復の術式も忘れるな。」
「これでよしっと。こういう作業は本来なら、秋姉もできるはずなのに。
どこにいったの?」
すると入り口付近で待機していたのであろう、アンが答えた。
「本日は地下演習場のお披露目をするといって、お出かけになりました。」
それを聞いて六花は大きくため息をついた。
「仕方あるめいよ。こう細かい値の調整はあの人にはできねぇかんな。」
「いつも直感だものね。間違えないのがすごいくらい。
あなたたちも大変ね。」
「そこも含めて、お慕いしておりますから。」
「そうだったわね。」
そういって、六花は立ち上がり、伸びをする。
「じゃあ、写真に撮って、何かあってもいいようにするか。」
そういうと、エンデはどこからともなくスマホを取り出す。
「あれ?それって、流のじゃ。」
「ばれなけりゃ大丈夫だって。すぐにもどすから、」
ーパシャっー
「もう、知らないから。先戻ってるよ。」
「おう!」
六花は怪談を上がり、食堂へと向かった。
後ろではエンデが写真の魔法陣を確認しながら、振り返り、階段を登ろうとした。
「えーっと。」
盛大に空振り、思いっきりこける。
「いってー!!」
「ふっ、ばかだ。」
アンに介助され、エンデも六花の跡を追った。
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おやつ時を過ぎて、再び、六花とエンデは地下へと降りてきた。
「確認は完了している。それじゃあ六花。中央に向かってくれ。
くれぐれも、線は踏むなよ。」
「わかってるって。よっ!ほっ!それ、に、して、も、
細かいわね~。やっと着いた。さて、魔素を集めますかね。
起動タイミングはよろ~。」
魔素が六花と魔法陣に徐々に満たされていく。
その間もエンデは、魔法陣の確認を怠らない。
間違えていたら、それこそ二度と元の世界に戻れないからである。
すると、後ろから紅葉が下りてきた。
「やってるわね~。」
「邪魔しにきたのか。」
「見学よ。それにしても、よく描き切ったわね。床一面びっしりじゃない。」
「まぁね。さて、見学なら、静かにしてね。
3分前になったらカウントするぞ。」
六花は無言で頷く。
しばらくして、エンデはカウントを始める。
「3分前。・・・。2分前。・・・。1分前。30秒。20秒。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、」
「「 起動!」」
六花とエンデの声が重なった瞬間。まぶしい光が、地下室からあふれる。
だが、それだけだった。
「ふぅ~。とりあえず無事ね。」
六花が一息ついて、腰を下ろそうとした瞬間、
目の前に光の亀裂が現れたかと思うと、
少女が飛び出してきた。
「お、お姉さま!空間への大規模な、か、干渉が、わ、わたし、どうしたら。」
その少女はそんなことを叫びながら、紅葉にしがみついた。
「大丈夫よ。セレス。落ち着きなさい。」
「でも世界が・・・。あれ?」
「世界は無事だし、何にも問題が発生していないでしょ。」
「は、はい。あれ?じゃああれは?」
「私の世界と安定してつなぐために、妹たちに干渉してもらったのよ。」
「妹さんですか。あれ?でも、前はいませんでしたよね。」
「昨日来たのよ。彼女たちよ。」
そういって、紅葉はセレスの後ろを指す。
「こ、これは大変お見苦しいところをお見せいたしました。
は、はじめまして、セレスと申します。」
「はい、はい、はじめまして、六花と申します。
管理者で監察者を兼務しております。」
そういって、六花はセレスに近づくと、セレスを優しくなでた。
「これは、なんか保護欲をくすぐるわ~。」
セレスは困惑してなすがままになった。




