愚かな者
「もう少しだ。」
「こんな場所はさっさと抜けよう。」
そう言って、男たちは口を布で覆いながら、
苦しくななる呼吸を誤魔化すように、
ただただ、暗く続く下水道をひた走る。
「おかしい、魔物の気配がない。」
「あの偽女王と愚王の余波で死んだのでしょう。」
「ならば好都合というもの。だが、利用するつもりで来たのだがな、
贄はこれで足りるだろうか。」
そう言って、何人かの男が担いでいる頭陀袋を揺らしながら言う。
「足りなければ、我らで一矢報いるまで。
もちろんそうならない事が重要であるがな。」
「待て、ここの、はずだ。」
そういって、先頭を進んでいた男が周囲の壁を叩きながら、
隠されたスイッチを探す。
ーカチリー
音がしたかと思うと天井から縄梯子が落ちてくる。
「まだ、駆動したか。使うことはないと思っていたが。」
「これは?」
「王城が奪われた際、城内に密やかに戻るための手段だ。
まさに今だな。私が最後に上がり、装置を元に戻す。
上がったところで一休みをしてくれ。」
そういうと、連携して、荷物を上げ、するすると全員が上がっていく。
「よし、これで。」
そう言って、縄梯子を装置にしまう。
そして、どかりと座る。
「少し休もう。しかし、そなたらの国の陣を壊したあ奴ら、
あの偽女王の兵であろうな。」
「でしょうな。動きが速く。対処のしようがなかった。」
「奴らはいますかね。」
「無理であろう。あそこへは、普通は入れない。
それこそ、王家しか入れない施しがしてある。」
「ならば!!」
「ああ、背後から刺してやろう。
そして、我らが神の最後の命を全うしよう。」
そういうと、最後の力を振り絞って立ち上がり、再び、
暗い通路を走り始めた。
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「着いた。この壁の先だ。」
そこはなんの変哲もない行き止まりに見えたが、
そこにいる者たちは不自然に途切れた通路の松明の光に気付き、
先にまだ空間があることを認識した。
「さあ、あと一息だ。」
そう言って、道を案内してきた男が壁をすり抜ける。
「おお。これは。確かに。」
次々に通って来たものたちが部屋を見回し、
目的の部屋であることを認識する。
「さあ、準備を!急げ、入り方が分からないとはいえ、
奴らは気づいているだろう。」
「ああ。そうだな。」
言われ、男たちは部屋の中央の魔法陣に頭陀袋を置く。
そして、案内してきた男が部屋の真北に置かれた宝珠に手を触れ、
強く強く神とのつながりたいと念じながら魔力をすすごうとする。
「はい。ご苦労様。」




