建国式
バルコニーに立った紅葉は周囲を見回し、
一息ついてから口を開いた。
「親愛なる皆さん!お集まりいただき感謝します!」
ざわついていた広場が静まり返る。
「この間の戴冠式、そして武闘会を盛り上げて頂き、
繰り返し感謝申し上げます。」
そう言って、紅葉は一拍置く。
「国を治めてまだ間もない、若輩者ではありますが、
この国のさらなる発展と安寧を目指い頑張る所存です。
しかし、その前に、皆様には残念なお知らせをしなければなりません。」
そう紅葉が宣言すると空中に広場の様子が映し出される。
そこには旧王族と人間体の商業神が後ろ手に両手を縛られ、
両膝をついて座らされている。
その様子をみて、群衆の中からざわめきがあがるが、
暫くすると、静かになる。
「この者たちは国民を異形に変え、他国を侵略するための駒として、
使おうをした者たちです。
そして、その商業ギルドの長はそれを供給していた大元です。
彼らを裁き、新たな帝国の門出としたいと思います。」
そう宣言し、手を上げようとする。
ーがっ!ー
ーキン!ー
紅葉に複数の影が切りかかるが、
レイとアンがそれぞれ、防ぐ。
広間のほうでも、見張りの兵に切りかかる者たちがいたが、
クリスの生み出した壁に吹き飛ばされる者、
ぶつかる者で混沌としている。
『きゃー!』
「鎮まりなさい!」
民衆が叫び声をあげて逃げようとするのを
紅葉が一喝してそれを押しとどめる。
「兵たち!賊を討伐しなさい!」
そういうと、サラの軍団が、民衆に紛れて逃げようとする者や、
玉砕覚悟で再び襲うものを切り捨てる。
「見ての通り、悪しき者は我が兵により、討伐されました。
今後も皆さんを守り続けることでしょう。
では、再度、刑の執行を!」
そう言って、紅葉が手を上げると、一斉に剣が下され、
首が落ちる。
「今後も、皆さんのために努めていきますので、
よろしくお願いいたします。」
民衆もその様子に拍手をする。
それを満足げに眺め、紅葉は控室へと下がった。
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「ちっ!役の立たない!」
男は橋のたもとの暗がりで舌打ちをし、
踵を返すと、下水道へと入っていく。
するとそこには同じような者たちがいた。
「彼らは?」
「全滅だ。」
「元教会騎士というから期待したが、使えんことだ。」
「かくなる上は、この石を使って、新たな異世界人を。」
「だな。急ごう。」
男たちは、そう言って、王城の方へと走り出す。




