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もう一人の六花

「この惨状で私ですか?」


人形に憑依して、帝国の執務室にやってきた美幸は書類にまみれた紅葉を見て、

開口一番そういって、ジト目で、信幸をにらむ。


「他に人材があるなら。」


そう返され美幸はため息を着いて首をふる。

六花は流治とともに迷宮化した島の正常化するために力を使っている。

それでなくても六花はユグラドシアの運営全般を行っている。


他のメンバーは政治をやろうとい気概は持っていない。

3姉妹というカードもあるが、彼女たちは世界ならともかく、

国の興廃に興味がないため、やりすぎるかやらなさすぎる。


「それでも・・・。無理ですね。」


「あの人たちを頼るのは、な。」


風間の両親を思い浮かべるが、風間家の面々はどちらかというと、

裁く、捌くといったことに力を振っている。

今回のような決めることに関しては、適切ではない。


「すー。はー。さて、やりますか。と、言いたいですが、

 圧倒的に人員が足りていませんね。

 とりあえず、私の周辺はこれを使います。」


そういうと、美幸の影から、西洋人形がいくつも出てくる。


「うわ!」


名取たちは空気になろうと壁際に立っていたが、

一種のホラーのような様相に驚き、壁に張り付く。


「相変わらずの量と品質だな。」


「私だけのオリジナル魔法だけどね。」


美幸は物語の管理者であり、システムのシナリオや

物語の運行のサポートをしている。

その過程で得た知識を自分の魔法にフィードバックしている。

それにより、人形にキャラクターを埋め込むことが可能になり、

与えられた役の中で思考し、自立行動をする。


「流石、もう一人の六花。風間の兄妹と同等の権限と力を持つ存在だな。」


そう言いながら、生徒を連れて美幸の横を通る。


「秋姉も連れて行っていいわよ。」


「そうか。すまんな。」


言われた紅葉は腰を丸め、幽鬼のように入り口に向かって歩く。


「ふっ。できたら、決済に伺うわ。」


「過去の記録は必要か?」


「無意味の上に、無価値ね。基本的な税金から考えて、

 それでも財政が成り立たないなら、とれるところからとる方針でいくわ。」


そういうと、紅葉が見ていた資料を人形の一人にまとめさせると、

名取たちに渡す。


「こっちは人事と立法を行っておく。完了は?」


「素案を1週間で上げるわ。住民税は兎も角、

 物品税をどこまでかけるが悩みどころね。」


そう言いながら、椅子に座り、人形たちとともに、

紙に物品と税率、想定金額を書いていく。


話は終わったという態度の美幸達を残し、

静かに部屋を後にする。

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