神の鉄槌②
「見せてやる!」
そう言うと、王子は銀色のオーラを纏う。
「信兄!」
<わかっている。>
木がいたるところから生え、闘技場の上空へともとに戻った住人や生徒を運ぶ。
「誰だかわからんが、邪魔を!だが、貴様を!」
月光のような光芒を纏い、紅葉に迫る。
「烈火!」
紅葉も烈火を使い、青白い光芒を纏い、王子に迫る。
-ガッキッン-
「やる!」
「があぁぁぁぁ!」
巨大な爪の斬撃を剣の峰で受け止めるが、咆哮を喰らい吹き飛ばされる。
「くっ!まずっ!」
横っ飛びで躱す。すると、爪が木を穿つ。
「これはまずい?」
<姫!某を。>
<私もどうです?>
そう言って、勇とキョウが降って来る。
「悪いわね。サラ。」
「いいえ。では私は周囲の牽制を。ご武運を我が姫。」
大剣から人形になり、一礼をすると、レギオンの指揮を行うべく飛び立つ。
そして、キョウと勇を身に着けると巫女服に似た、羽織に袴の姿に変わる。
「どんな姿になろう、が!」
柄を握ったと思ったら、その姿が掻き消え、王子の爪が切り飛ぶ。
「浅い?違う本能でそらした?」
少し後ろに現れた紅葉が再度王子に向き直る。
「おのれぇぇぇ!」
斬られた爪が再生し、1本であった尻尾が2本に増える。
その尻尾が伸びて、紅葉を突き刺そうとするが、紙一重で躱し、
叩き切る。
「くそくそくそ!」
2本が4本に、4本が8本になる。
だが、紅葉はそれらを躱し、切り続ける。
「9本以上にならない。やはり9本は神の領域なのね。」
<だめだな。怒りもそうだが、獣だからからか、読めん。>
「気にしないで。わかっていたことっよ。」
勇の能力である心眼が役に立たない事は分かっていた。
それでもキョウの縮地と直感で避け続ける。
「もう。決めたい。」
<属性を変換する。加具土命を使え。>
「待ってました。勇。耐えてよ。」
<役立って見せましょう。>
周囲の大木が徐々に金属の光沢を放ち始める。
「まだ、まだ。」
すべての木が金属になるのを、ただただ避けながら時には切りかかりながら
待ち続ける。
「何を待っているのかしらんが、いい加減倒れろ!」
怒りなのか、何なのかわからないが、王子の体が肥大化し、
爪による斬撃、尻尾による刺突が激しさを増す。
30分ぐらい経ち、ようやく周囲の木がすべて金属の光沢を放った。
「よし!」
そう言って、飛び下がると改めて、柄に手を置き、抜刀の構えをとる。
「覚悟を決めたか!死ね!」
「あなたがね。加具土命。」
静かにそう言い、その場で抜刀する。
振り切った刀を静かに鞘に戻すとーチンッーという音が響いた。
その瞬間、向かってきていた尻尾と王子の体に青い炎が走る。
そして、徐々に勢いが強くなり、周囲が青白い炎に包まれる。
燃え盛る尻尾が紅葉に刺さるが何事もなかったようにすり抜ける。




