戦乙女
「姫様!」
「はいはい。」
司会が紅葉を呼ぶとその姿がステージに現れる。
「痛かったです~。」
「ごめんよ。」
司会の頭をなでながら、そんな気の抜ける会話をしつつ、
襲ってきた敵をあしらう。
「はぁ~。こんなはずではなかったんだけどね。」
「「「秋ちゃん!」」」
「ごめんね。こんなんなっちゃって。」
5人は首をふって否定をする。
「それこそまさかですよ。狂った者の思考なんて、読めるはずないんですから。」
「まぁ、ね。」
そんな会話をしていると声がかかる。
「話し合いは済んだかい?簒奪の女王陛下。」
「はぁ。やっぱりあんたは喋れるのね。」
「ほう。我を知っているのか。我も、」
「いいや。単に動きが野性的でなかったからいっただけ。」
話しかけてきた獣に対して、そう答えると、ぷるぷると憤った。
「まあいい。教えてやろう。まれは貴様が殺した王の息子だ。
まあ、王子だな。」
「そう。あれらも。」
「そうだが。まぁ。素質がなかったようだがな。まぁ。
我は選ばれた者ということだ。なんだその顔は!!」
あきれた顔をしている紅葉に怒鳴る。
ため息をついて首を振って紅葉は王子の方を向く。
「いいえ。そう。そうね。これは私の罪。」
「そう貴様の罪だ!」
そう言いながら、襲ってきた元王子を吹き飛ばしながら、静かに歩き始める。
「1つ、後先考えずに剣を振るってしまった。
2つ、事前の調査を怠った。
3つ、面倒だからと一網打尽を狙い、多くの人を危険をさらした。」
そう言いながら歩きつつ、炎を纏い、鎧をまとう。
「私は自分の罪を数えた。
さぁ!今度はあなたの罪を数えなさい!」
横を向き、飛んできたサラを右手で握り、その切っ先を
飛ばした王子に向けてそう言い放つ。
「私は王だぞ、神に近しい我が罪を犯すものか!」
そう叫ぶ。
「そんなわけがあるものか!」
「王であっても人だ!」
「過ちを犯したら、償い。それを糧に前に進むんだ!」
「偉そうに我に意見をするな!!小僧共!」
そう王子が吠えると残った4人の獣が王子の周りに集まり、
一斉に生徒に襲い掛かってくる。
「腐ってる。遅すぎたのね。軍団!」
紅葉がそう言うと、炎の羽を生やし鎧をまとった戦乙女が複数人現れ、
剣を眼前に持ち、会場を守るようにぐるっと立ち並ぶ。
それを見て、躊躇するように動きを止める。
「なんだこの者たちは?それにその姿はなんだ?」
戦乙女を召喚した紅葉は髪は白銀になり、緋色の羽が生え、
最初鈍色だった鎧はシルバーゴールドに近い色に変化していた。
「くっ。はったりだ。こうなれば。来い!」
そう王子が呼ぶと、通路からワラワラと獣が集まってきた。




