神霊化と精霊化
控室に入ると、ゆっくりと、ベッドの上に名取をおろす。
生徒たちが周囲を囲む。
「秋ちゃん。名取は?」
「一種の暴走ね。ドール側に制限がかかっていたおかげかそれとも。」
そう紅葉が説明をしようとすると、アンとレイが人形になって、
紅葉の背後に傅く。
「申し訳ございません。制御しきれませんでした。」
「いいのよ。あなた達の所為ではないわ。
練習もなしに使わせてしまったのも悪かった。
神霊化なの?」
「恐らく。精霊化までなら、アンと私で出力を制御できたでしょう。」
「そうね。そう考えて、あなた達にサポートをお願いした。」
「秋ちゃん。精霊化とか神霊化とかってなんですか。」
「ああ。そこからか。」
そう言って。紅葉は少しベッドから離れて、自分を炎で包む。
「普通、こんな風に炎に包まれれば、
人は熱さを感じるし、なおかつ、燃えてしまう。
でも、炎の精霊になればどう?」
「それは、炎という現象を自分でコントロールできるようになると思います。」
「その通り。」
そう言って、紅葉は炎を自分の体からはがし、人形を作る。
「こんなふうに、自在に動かせる。だけど、これには問題がある。」
「なんです?」
「炎を相手に強制的に奪われると、燃えるし、自分も動けなくなる。
これが精霊化。ま、大概そんなことができるのは、
神かそれに近い力を持つものだけどね。」
そう言って、ツンッと人形をつっつくと火花を散らしながら、消える。
「では、神霊化とは?」
「炎なら。それ自体になること。私がよくやるでしょう?」
「え、あれそうなんですか?」
「そうよ。私の場合は火山の神霊化に近いかな。」
「どうすると暴走するのです?」
「不思議なことに、魔素の存在する世界では、
現象や事象には少なからず意思が介在するの。
だからときどき、指示や願い方を間違えると、必要以上の力が使われたり、
事象が発生しなかったりする。そして、その意思が大きくなると・・・。」
「使用者の意思とは関係なく、別の意思により力が振るわれる?」
「そう、その通り。それが今回の暴走。」
「でもなんで神霊化なんです。精霊を憑依させたはずでは?」
「それがね~。名取のアスカは精霊ではなく。準神獣。なのよ。
だけど、その力はまだ幼いから精霊化のはずだった。
でも、名取の力と合わさって、神獣に近くなり、
ぎりぎり神霊化のレベルになった。」
「ほへ~。」
「なら、なんで、龍と憑依している俺らは?」
「龍の器に制限をかけてるのよ。」
「なるほど。その制限を忘れていたと。」
「うーん。それはどうだろう。わざと制限をしていない。
そんな気がするのよね。」
そう言って、紅葉は苦笑いをする。




