女神の欲・女神の怒り
「我らを世界の覇者にするためではないのか・・・。」
<あなたたちを?笑わせないで。召喚魔法で世界を混沌に落としたくせに。
あなたたちを利用したのは、その精神性が利用しやすかったからよ。>
東方諸国の誰かのつぶやきを商業神は一笑する。
<あなたたちは欲深く。愚かにも他者の力で強くなった自分を
成長したと勘違いした。
傍から見ている分には滑稽だったわ。
それに、覇者が生まれてしまえば競争はなくなり、それこそ停滞を生む。
思想や環境をあえて私たちでコントロールし、競争を促し、
進化をさせようとしているのに。
それは、私たち、いえ、世界の理に反するわ。>
その発言に紅葉と信幸はうなずく。
「そりゃそうだ。一個人の思想や思考により、下が動くのなら、
進化や成長はないわな。」
<私はあなたたちを武神が滅んだ時のバックアップにするために、
力を与えたに過ぎない。
もう少しうまく踊ってくれるかと思ったのに。残念だわ。
さんざん力と技術を提供したのに、生かせずにこんなものたちにも負けるなんて。
分をわきまえて、自らの役割に気づくものが生まれるかと思ったのに。
最後の最後まで、あなたたちは不義と欲望で動いた。
糧にもなりもしないでのうのうと生きて。ガァ!>
「あんたさぁ!生命を何だと思っているのさぁ!」
紅葉が顔を踏んで問いただす。
「ホントにあんたあの子が産みだした存在なの?
その精神性は私の世界の邪神に近いものがあるわ。
まぁ。大っぴらに動かなかったから、邪神認定が避けられただけだろうけど、
私と戦った時は邪神に一歩踏み込んでいたものね。
まぁ。神の力は半減して今は行使すら、できないだろうけど。」
ぐりぐりと、踏みつけながら、紅葉がいう。
「怒りたくなるのはわかるが、その辺に、紅葉!」
信幸はそう叫ぶと、商業神を紅葉の足元の影に落とす。
呼ばれた紅葉は、とびかかってきた、影に大剣を突き刺す。
「あちゃ。やっちった。」
「しゃーなし。」
飛びかかってきた影は先ほどまで気絶していた、化け物と化した皇帝だった。
大剣が突き刺さったことと、紅葉の権能により、炎が包み込み、
その身が焼け、後には塵すら残らなかった。
「神の力でも飲み込もうとしたのかね。
はぁ~。どうしよう。六花からは皇帝は生かすように言われていたのに。」
「俺も、一緒に怒られてやるよ。だが、問題は、
帝国の王を新たに定めてもらわんとな。」
「もめるわよ。それに、ここにいるもの以外が王位についたら、
また面倒くさい。」
「だな。はぁ~。注意を受けてたのにな~。」
そう言って、東方諸国の王たちを二人が睨むと、びくっと体を揺らし、
全員が膝をつく。
二人は顔を見合わせてため息をついき、天を仰いだ。




