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商業神の手計

<それは、人類の欲をより一層刺激し、進化を促すため、です。>


やっと、落ち着いた商業神がそう口にした。


「でしょうね。そうでなければ、精霊もあんなふうにはならないし、

 ビエツがあんな技術を発展させるわけがない。」


紅葉が圧をかけつつそう相槌を打つ。


「でも、進化させるにしてもやり方が・・・。」


そう、宮城が細い声で指摘をする。


「そうね。わかるようにどうしてそんなことをしたのか説明をなさい。」


紅葉が話すように商業神に圧をかける。


<我々神は管理者から生み出された存在です。もちろん精霊も。

 この世界の神は人々の営みに近い技能や概念に紐づいて生み出されました。

だから、争いが技術を、欲が精神を強制的に成長させ、進化させることを

 最初から認識していました。ある程度、人類が進化しきると、

 すべてが停滞しました。武神はその時、その停滞が許せなくなり、

 自分の担当する領域の生命を滅ぼし、また、その過程で人類が

 神を倒しうる可能性を感じ、力を求め、堕ちました。

 その時、人類に対処が難しいと判断した、セレス様が領域を封印し、

 倒しうる知識や技術を持つ存在を得るために、

 召喚魔法を人類に授けたのです。>


「そうね。私もそう聞いたわ。それを人類が悪用したという話もね、」


そう言って、周囲を睨む。

その睨みに周囲の貴族は委縮する。


<そうです。神を倒す名目で大量に召喚を行い、戦力や技術、知識を搾り取り、

 世界の魔素等が乱れました。でもそのおかげで、

 私は彼らから一つの知見を得ました。流通を使って、

 人の欲を刺激する方法を知ったのです。>


「それが、拙かったわね。」


<後悔はしていませんよ。必要だと思ってやったことです。

 精霊と東方諸国を唆し、人類の欲を刺激することに成功し、

 対立を生み、精神と技術の成長を、ぐぅっ。>


紅葉が顎を右手で強くにぎって顔を持ち上げる。


「それで、どうなった!まあ、異世界から召喚されたものが、大量死した理由が

 この世界の人類のせいだとして。まともな召喚者を東方のやつらが利用し、

 契約者と離れた精霊は暴走。自然はめちゃくちゃ、人類もめちゃくちゃ。

 お前のいう人類の進化っていうのは、

 お前の周囲の人類が進化すればいいのか!」


紅葉の髪が白くなり、周囲が陽炎のように揺らめき始める。


<ぐぅぅぅ。うっう。>


すると商業神の顔が苦痛でゆがむ。


「そこまでにしておけ。紅葉。それ以上は俺らも危ない。」


そう、信幸が諭すと、地面にたたきつけるように手を放し、深呼吸をする。


<ふふふ。ああそうさ、私の子飼い以外はどうだっていい。

 だから、東方諸国も精霊もそのためなら、使い捨てにするつもりでいたわ。

 そうすれば、次の世界では私の子飼いが管理者となり、

 私はより高い次元に至れる。>


「それが、本音か。わかったろ、お前らはこいつの子飼い達の

 噛ませ犬でしかないんだよ。」

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