びびる商業神
「というか。説明した?神や精霊、この世界について。」
「いいやまだだ。」
「ちょうど、ほぼ全部の国がいるんだから教えてあげれば?
というか、あの、精霊を主神としている宗教の本山が
どうなったか調べてないのこいつら?」
紅葉が若干いらいらしながら、ヴェネアテの件を口にする。
その発言を聞いて何人かは怪訝な顔をする。
「紅葉。あれは、公式には復活した芸能神とその眷属が壊したことになってる。」
信幸がそう口にすると、紅葉は六花に共有された情報を思い出し、
ああっと手を打つ。
生徒がそれをジト目で見るがどこ吹く風で受け流す。
「まあ、いい。本人から聞けよ。お前らが必要悪にされた理由を。」
そういって、信幸が杖で床を突くと、宮城の影から、
真っ黒な帯でぐるぐる巻きにされた、狐らしき物体が飛び出てくる。
その物体は体をくねったり、叫び声をあげようとしいているのか、
顔の辺りが震えたりしている。それを押さえつけるように、
黒い帯から触手のようなものが伸び、動いた部分の中央に突き刺さる。
するとビックビックと脈打つように震える。
「え、あれが入っていたの?」
宮城が苦い顔をする。信幸はそれを見て、あ、隠すのを忘れたと思ったが、
何事もないように、その物体に近づき、顔のような部分を杖で叩く。
すると、黒い帯が解け、白い狐の顔が現れる。
「ほら、お前の上客だった皇帝が前にいるぞ。」
そう声をかけると、狐の目が皇帝をとらえ、その変わり果てた姿を認識すると、
絶望の表情になる。
「ねぇ。正直に答えてよ。」
視線を遮るように、紅葉が狐の顔の前に割り込み目を覗き込む。
その目を見た狐は泣きそうになりながら、頷く。
「まず、あなたがどんな存在なのか答えてもらおうか。」
<わ、わた、わたしは、めが、女神、セェ、ヒック、セレス様にうみ、
生み出された。
しょ、商業、商業神、です。しゅ、しゅういぃぃ、にわぁ、
は、白尾と、なななのってました。>
声を上ずらせながら、紅葉の質問に答える。
それを聞いた、東方諸国の面々は商業神とやり取りをしていたこともあり、
商業神の名乗りを聞いて、唖然とする。
「そう。どんな商売をしていたの。」
<ふ、ふつうのぉ。ギャア!>
普通の商売と答えようとした商業神が突然悲鳴を上げる。
「言っとくけど、嘘をつくと自動的に縛っている奴が食い込むよ。」
<ひぅ。さささ攫った、こ、こどもや、だだまして借金、ままみれにした人を
うう売りかか買いしたり、せせ精霊から、まま魔玉やま魔薬を買って、
人にう売りました。>
「だよね。詐欺行為をして、ドワーフから買いたたいた武器を
高値で売ったりもしてたのよね。」
そう、紅葉が聞くと苦しそうな顔で頷く。
それを聞いた周囲は絶句するものと、驚愕の顔をするもののどちらかだった。
「でも、なんでそんなことをしたんですか?」
富士がよくわからないといった感じで質問をする。
商業神はそれを無視するが、紅葉に目で促されて、しぶしぶ口を開いた。
それは、神ならではの行動原理だった。




