乱戦
-ガキンッ!ガキンッ!-
そこかしこで刃物が振るわれている。
「はぁ~。メンドイ。」
紅葉は生徒を引率するように先頭を歩く。
時折、華夏の兵と思われるものが切りかかってくるが、
作業のように、刀を鞘に入れたまま、相手を殴り、沈めていく。
生徒も今日は特性の棒を振るって、後方や横から飛び出してくる兵を
一刀のもと沈める。
「この装備いいですね。人を切る忌避感なく、対応できます。
特にこの感電?のような機能はいいです。」
「そりゃあ。あんたたちにはまだ早いもの。
でも、なんで私まで。」
「それは目の前で切られたら、グロで吐く自身があります。」
「あっそうか。」
名取と紅葉がくだらないやり取りをする。
今回は生徒たちが使う装備は、暴徒鎮圧用の特殊な竹刀に似た木製の刀である。
通常のお土産屋の木刀と違うのは鍔がついている点である。
機能的には、致命打で気絶、有効打で麻痺のダメージが『魂』に入る。
肉体ではない点がこの武器の特性である。
作者は信幸とエンデであり、特性も二人の権能由来である。
「にしても、王国は気合が入っているわね。」
「練度が違いますよ。秋ちゃんの訓練という名の試練に付き合ってますから。
にしても、素手で鎮圧とは。」
神戸が苦笑を浮かべながら、答える。
王国の騎士は当初、剣で鎮圧をしていたが、数度打ち合うと、
こぶしに切り替えた。
というのも、紅葉の気迫に慣れたために、剣を見て避けたり、
掴んだりすることができるようになり、
逆に剣では鎧にはじかれ、一撃で鎮めることができず、
戦いがしづらくなったからである。
「まっ、俺らにしたら、いいんですけどね。
しかし、唸り声がそこかしこから聞こえてくるんで哀れになりますね。」
富士がそんなことを言いながらまた一人沈める。
あるものは鎧がひしゃげ、あるものは骨が曲がってはいけない方を向き、
あるものは、兜を逆向きにされたうえで、脱げないようにつぶされ、
ごろごろと床を転がっている。
「っと。ここだ。」
そういうと紅葉は力いっぱい扉を蹴っ飛ばす。
「はぁい。信兄。オマタ?」
「いいや。待っていない。というか。いいタイミングだ。」
そう言った信幸の前には、木で壁に縫い付けられた人たちがいた。
「この人たち?」
「ああそうだ。必要悪として役割が与えられが悪でしかなくなった存在だな。
今は弱体をさせつつ、捕縛している状況だな。」
そう言った信幸の横に生徒を連れて並ぶ。
「我らが必要悪だと?我はすべてを統べて、統一王になるものぞ!」
「いやいや。無理でしょ。私たちをどうにかできていないのに。
それにそんな情けないすがたで。」
あきれながら紅葉が返すと、体を前に振りながら、暴れる華夏の王。
ーミシッー
「うん?ちっ!」
慌てて華夏の王の周囲をより強固にするが、
間に合わず華夏の王だけ自由になり、生徒につかみかかってくる。
「よっと。」
気楽な感じで、紅葉が抜刀をして、棟側で振りぬく。
「ぐはっ。」
「だめじゃん。」
「すまん。だが、あれは?」
「ああ。例の宝玉じゃない?」
「商業神っか!あいつ!!ホント!碌なことしなかったな。」
吹っ飛ばされた王を再度縫い付けつつ、信幸は激高した。




