国際会議開催前
「で、そろったのは30か国中20か国?」
王城の廊下をジャークスと歩きながら、参加者の説明を受ける。
「ええ。」
「何か嫌な予感が。」
「雅兎に近い国が来ていないようです。」
「辛辣なことを言うが、入れんぞ。そのまま死ねばいい。」
信幸は処置なしという顔でジャークスに答える。
「どういうことです?」
「ダンジョン化していたのさ。しかも、神の力の一部と精霊の属性を使ってな。
下手に開放すると、スタンピートが起きる。帰ってくるときに間引いたが、
それ以上、漏れるのを防ぐために、結界を張ったはずだ。」
「そういうことですか。」
「その説明と技術提供の場としての会議だったんだがな。」
「あと、厄介なのはそれをたきつけたと思われる華夏が参加している点です。」
「あー。どの世界にもいるのな。そういう国が。
ま、一度会いたかったのは事実だ。そいつの中を見て、どうするかを決める。」
「決めるとは?」
その問いに答えず信幸はニヤリと笑い。会場に入った。
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「国王陛下。信幸様がご来場です。」
「おお。これはこれは。信幸殿。
様々なご助力とビエツの件は大変感謝しております。」
「いえいえ。本日はビエツ国の代理として参加させていただきますので
よろしくお願いいたします。」
「おお。そうでしたか。」
そんな挨拶をしていると、急にエプス国王は耳元まで顔をよせ声を落として、
話始めた。
「華夏がどうもビエツに間者を送ろうとしているようです。
我が国にも数名。六花殿の提案で作った組織によって、
何名か捕えたことで、判明しました。」
「なるほど。ま、大丈夫でしょう。一応軍は展開してきました。
一応、この会場の周辺には生徒たちと紅葉を配置しています。」
「それはそれは。安心ですな。」
そんな会話をして、信幸と国王はそれぞれ隣あった席へと座った。
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そんな二人の様子を華夏の帝王と外交官はジッと見ていた。
「あの男は?」
「なんでも異世界の勇士とか。すみません。情報が少ないのです。
精霊に誑かされてこの国の貴族が召喚を行った事件の後から
居ることは分かったのですが。」
「そういえば、最近この国もビエツも内部情報が盗みにくくなったと
報告があったな。」
「そうです。どうも、今回の召喚はあたりだったようで。」
「なるほどな。どうも、我が国では召喚はうまくいかない上に、
神がいる国からは蔑ろにされている感がある。
この場で力を示し、我が国こそが民を従えるにふさわしいことを
証明しなくてはな。
まっ、力を示せなくとも、この場で無理にでも了承させればよいだけだ。」
「ははっ。」
だが、二人は知らない。ふいっと、周囲を見回した信幸の目が
一瞬軽蔑の眼差しになったことを。




