番外:残った3人の今
「はぁ~。かったるい」
流治は膝を曲げて、木の手すりに寄りかかりながら座り込む。
「確かにこれは面倒ね。」
六花は再生させた神社の階段に腰かけて周りを見渡す。
「ひう。」
セレスは周囲の状況に怯え、六花の背中に隠れるように縮こまった。
「一回神の思念で汚染されると浄化は無理だな。人力でやるのには無理がある。」
「そうね。思いが土地に沁みついて、根源をたたくこともできないし。
ましてや、魔力で浄化しようにも対象が大きすぎて、スズメの涙だものね。」
「六花さま~。あ、あの結界の周りだけでも~。」
セレスが怯えた声で懇願するが、二人は首を振って無理だという意思を示す。
「力の消費の無駄だ。すぐに囲まれる。一応、俺と六花で、
外への流出を防ぐ大規模結界と神社を中心とした領域型の結界での
現状維持が精一杯だ。どうするよ。六花。」
「そうね。最終手段は、この土地を流治が消して、
同じものを私が再生することだけど。
それだとあの神との繋がりがね~。
いや~。ホントどうしよう。」
六花は顏をしかめて、頬杖をつく。
「ぐるっとこの島を周った感じ、知性体もいるしな。」
「そうなのよね~。」
二人そろってため息をつく。そんな二人の後ろ、社殿に設置した、
六花謹製の鏡が光輝き、エンデが現れる。
「まいど~。お届け物です。」
「ご苦労様~。」
「おや?元気がないな。」
それを言われた六花は黙って指を指す。
「は、は~ん。これはこれは。また、大量で。」
「これでも結界を張る為に倒しながら移動したのよ。
でも、すぐにこれだもの。」
「マジか。うーん。やはり、武神を急ぐか。」
「それもね~。できれば、それはしっかりと育てたいのよ。
どうしようかしら。生まれた端から別の世界に転送してって。
それはだめね。リソースがその世界にながれて、いや、
死ぬ間際に再度転送すれば。うーん。」
六花が何か不穏なことを考え始めたが、
フレイはその独り言を聞かなかったふりをして、
机にお茶と料理を並べていく。
セレスがその手伝いをして、並べ終わると、
二人はそろって座り、流治も尻を払って立ち上がり、
六花の肩をたたいて、ご飯を食べるように促す。
「もう面倒だから、転送しつつ、大量の兵を投入して、
殲滅作業をしようかしら。」
「やはり、それが安牌か。安地の作成は投入した兵にやらせれば、
とりあえず領域の確保はできそうだな。
だが、この地はいいとして、転送ってどこに送って誰が対処するんだ。」
「う~ん。そうよね~。」
しばらく六花はご飯を食べながら、考え。
そして、エンデを見る。
「おい。何を考えた。」
「ねぇ。エンデ。修行システムとして、こっちの世界とつないだまま、
私たちの世界に魔物を呼び出すシステムは作れない?」
「おい。なんで、そんな面倒なシステムを提案する。」
「だって、あなた『空間』じゃない。」
「だからってな。やらんぞ。今はそれどころじゃない。」
「そうよね。あれもあるし。というか、あれが軌道に乗っていれば、
ある程度のことはできたのにー。」
「ないものねだりしてもな。まあ、帰る前にある程度間引くから
それで許してくれや。」
「むー。しょうがない。早めに兵の輸送をお願いします。」
そういって、六花はエンデに頭をさげた。




