航空機
「これはいいものですな。」
ラウンジで紅茶を受け取り、改めて操舵室へとやってきた宰相がいう。
「遠くまで眺められ、都市の様子がよくわかる。
用途は多岐にわたりますね。運転も簡単なのがいいですね。」
信幸の操舵の様子を見ながらいう。
「まあな。出力の調整が難しいから、出力調整係がいれば、
もっと簡単に操舵ができるぞ。」
「なるほど、出力が高すぎると、高すぎて危険ですし、
速すぎてもだめだからですね。
あと、弱すぎると落ちてしまうからですか。」
「その通り。俺らの部隊にも、機関士という専任職がいるくらいだかな。」
「なるほど。なるほど。ちなみにおいくらぐらいですかな。」
「そこは、まだなんだ。この船は材料は俺持ちだしな。
向こうに戻ったら、職人に聞いておくよ。」
「そうですか。それはちょっと残念ですな。」
そう言って、正面を目を細めて、眺める。
「そうだ。これの件とあと、例の顛末の報告があるから、
各国の代表を集めてくれないか。」
「そうですね。それは必要ですね。わかりました、
書状を各国に送っておきます。速くても、2か月先です。」
「ビエツは俺持ち帰る。」
「わかりました。先にしたためて、お渡しします。」
「さて、もう着く。お忘れ物がないように今一度お確認くださいってな。」
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書状ができるまで、信幸はフレイのサポートを、
紅葉は生徒と兵士の訓練に時間を費やした。
「じゃあ、俺はビエツに帰る。」
「気を付けてね。」
「というか。紅葉お前は一旦六花達のところに行くべきではないか。」
「いやよ。あの二人なら、そうそうなことは起きないわよ。
なにかあってもフレイに連絡が来るだろうし。」
「それもそうだな。」
「じゃあ、数か月後にまた。フレイ。流治への説明と連絡を頼む。」
「わかった。でも、数か月もかかると物資の補給をしなきゃだね。
手配しておくよ。」
「近代兵器の持ち込みの検討もしてくれ。頼むよ。」
「了解。その辺も調整だね。」
「じゃあ、行く。」
「「いってらっしゃいませ。」」
生徒とメイド、サーバントに見送られ、タラップを歩き、
操舵室に入る。
出力を上げ、一路ビエツへと船首を向けた。
「行ったね。」
「そうですね。ブレーキ役がいなくなりましたね。」
名取のセリフに全員が噴き出す。
「どういうことよ。」
「さあ。」
紅葉がジト目で名取を見るが、名取は素知らぬ顔をして、
談話室へと後ろ手を組んで向かった。
「ちょっと~!」
「そのままの意味ですよ。とりあえず、
レイとアンを呼び出してもらえますか。」
「えっ。あっ。はい。」
大真面目な顔でフレイに言われ、思わずうなずきながら、
二人を呼び出す。
呼び出された二人も口を押えて笑うのをこらえながら、
フレイに今後の予定を確認するためについていく。




