航空という技術
バルコニーまでの道、だれも一言も発することはなかった。
そして、バルコニーの前には生徒と紅葉、信幸が立っていた。
生徒たちはフレイに声をかけようとするが、王たちをみると、
慌てて居ずまいを正す。
紅葉も含めて、ドレスとスーツを身にまとい、
正装をさせられ、それを着させた張本人に文句を言いたがったが、
身内だけならいざ知らず、王たちの前では言いずらいのか、
苦虫を嚙み潰したような顔をする。
「ここから、船内に入れます。信幸、作成者の君から案内をしてくれ。
私は後から彼女たちとついていく。」
そう言うとフレイは、コートや帽子を受け取り、サーバントとメイドに渡すと、
何かを指示して、その場に留まった。
任された信幸はタラップの前立、呆けている王たちを促す。
「では、ご案内いたします。」
王を中心に、宰相が右、左に信幸。その信幸の後方を紅葉が歩き、
生徒たちは護衛の兵士と並んで歩く。
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「という感じで、兵士の輸送から、物資の輸送、観光船としても運行できます。」
「観光船とは?」
「そうですね。これに乗って、王都の周辺を飛んで景色を楽しむことですね。
試しに飛んでみますか?」
「おお。ぜひ頼む。紅葉、俺は操縦をするから、デッキへ案内してくれ。」
「私はここで見学しても良いですかな?」
そう宰相が問いかける。
「見ていてもつまらないですよ。それより、2周させますから、
1周目は景色を見たらどうです?」
「おお、そうですか。では、そうさせていただきます。」
そう言うと、いそいそと紅葉を追いかけて行った。
「さて飛ばしますかね。」
そう言って、操舵輪を握り、脇の伝声管に向かって話しかける。
「これより、航行する。タラップを回収。フレイ。」
「はい?」
フレイを呼ぶと後ろから返事が返ってくる。
「そこにいたか。ロープは?」
「外しておきました。」
「では飛ばすか。」
「では、私はラウンジに飲み物を配膳しておきましょう。
寒いと温まるものが恋しくなりますからね。」
フレイはそう言うとカートを引いたメイドを連れ立って、
ラウンジへと向かった。
「ああそうだ。冷蔵庫の物も使ってくれ、腐るから。」
「了解です。」
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「おお、これは!いいな!」
「今だけですよ。これが増えたら、地上と同じように
飛んでいい場所を指定しないと
事故が起きた時や渋滞で団子になって大変です。」
「おお確かに。商店や軍事施設にぶつかったら大変だ。
おお、城の庭園がよく見える。うん、端がいまいちだな。」
「これはすごいですな。上からだと、都市をどちらに延ばせば良いか。
どんな建物なら建てられるかが一目瞭然ですな。」
高さに足がすくむものがいる中、王と宰相は子供のようにはしゃいでいた。




