最終決戦
<小僧ども来たか。>
緑と水色の女性が社の屋根から見下ろしながらいう。
「生まれたての精霊に小僧呼ばわりされるほど、若くはないがね。」
信幸が真っすぐ睨み返していう。
<ほざけ。大気と水を操る我に何ぴたりとかてるものか!>
そういって、いくつものつむじ風と氷の礫をまき散らす。
(水がもとになっているからか、致死性の高い攻撃が少ない。)
流治が離れた場所から分析をして、信幸に伝える。
(攻めるなら、自分の力を理解できていない点か?)
(そうだね。秋姉の力はまだ有効かな。)
そんな会話の表で、苛烈な攻撃が繰り出されるが、
紅葉の炎と大野のガードでことごとく防いでいた。
(何なら、六花や流治も手伝っていいのよ。)
(何度もいうけど、これは私たちの案件ではないから。)
(ちぇ。)
そんな会話のさなか、名取と宮城が背後に回り、
痛烈な一撃を与える。
<ちぃ。忌々しい。>
そういって、精霊が手を振るうと、強烈な水が二人を突き飛ばす。
二人は剣で勢いを殺したが、それでも社の障子と襖を何枚か割り、
陰湿な部屋でやっと止まった。
「何だこの部屋。」
「見て。濁った宝玉がこんなに。それにこの魔法陣」
「もしかして、こいつが。」
その時、天井が大きくくずれ、精霊が姿を現した。
<我が聖域に誤って紛れてしまったか。ここから去ね。>
そういうと、二人の背後から氷のつぶての嵐を怒涛の勢いで打ち出す。
名取は光で、宮城は土で盾を作り出すが、勢いに押され、野外へと弾き出される。
「秋ちゃん。奥にこれが。」
精霊に見つかる寸前。二人は一つづつ宝玉を隠していた。
それを紅葉に見せると一緒にのぞき込んだ信幸は何も言わず、
杖を地面に突き刺す。
「大樹!」
そう叫ぶと、社を構成していた木材が木へと戻り、そして、一つの大きな木へと変わる。
<ちぃ!やってくれたな!しかし、これだけあれば!>
その変化から逃れた精霊が二つの宝玉をもって、現れる。
<今まで、耐えられないと思い。躊躇していたが、致し方なし。>
そして、それを体へと押し込んだ。
<ぐっ。なんだ。この程度か。ああそうか。風を取り込んだからか。
ああそれに。なるほど。でも、それでも彼に会えない。
私が会いたいのは今の彼だから。>
最後のほうは聞き取れなかったが、紅葉と信幸は体を強張らせる。
すると、生徒たちは影に落ちるように消えた。
(流?)
(そうだ。こいつはまずいぞ。さっきまでとはダンチだ。)
「流治さん?」
「お前らを守りながらでは厳しくなった。今からの戦いは神同士の戦いだ。」
そういう、流治の顔は今まで以上に険を帯びていた。
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精霊は周囲の水分と大気を吸収し、
その質量を増大させより大きくなろうとしてた。
それを見た、信幸は雷で紅葉は炎と土で、吸収を抑えようとするが、
力負けをしてしまい、うまくいかない。
<ふふふ。今まで以上に風をうまく操れる。そうこんなふうに、な。>
そういうと、一瞬で二人の背後へと移動する。
「はっ。やっとそのレベル?」
そう、煽りながら紅葉は飛燕<飛炎>を繰り出す。
<なっ。今のは人では捉えられるはずは。>
精霊は驚きながら、後ずさる。
「まぁ。こっからが本戦ってことよ。」




