島国
「あれが雅兎国ですか?」
そう、対岸を見ながら名取が聞く。
その先には、空は荒れ狂い、波は荒れ、辛うじてその先に島の影が映り、
陸地があることだけが分かる。
「恐らくな。六花と白虎、エンデの調査ではそのはずだ。
だが、予想外だな。封印結界と天然の結界で、侵入が困難だ。
やはり、六花とエンデ、流治のサポートが必要だな。」
「そういわれてみれば、島国の最大の利点は天然の結界でしたっけ?」
そういいながら、宮城が飛空艇から降りて近づいてくる。
「そうだな。大陸もしくは陸地から海を隔てて、
ある程度は離れていて、かつそれなりの領土を持っていれば、
島国として成り立つな。
しかも、徒歩での移動ができず、空と海という不安定かつ、
大量輸送時の量が限られる。
という条件が付くがな。
海の代わりに山や渓谷でぐるっと囲まれている場合も該当するな。
そして、今回の厄介な点は異常な気象条件を故意に作り出し、
内外からの流出、侵入を拒んでいる点だな。」
「航海も飛行も難しいということですね。」
富士が体育座りをしながら、呟く。
「そうだ。まあ、大気が薄い場所所謂成層圏まで行けばわからんがな。
だが、そんな高度に何の装備もなくいくわけにもいかん。
だから、今回は魔法のごり押しでいく。」
「む~。ごり押しでいいなら、炎の渦とか大地の隆起でいいじゃない。」
紅葉が信幸の横に来ていう。
「お前なー。それは却下しただろう。炎の渦は風の影響でどうなるかわからんし、
台地の隆起も波で削られる上に、狭い陸地で逃げ場がなくなったら、
危ないということになっただろう。」
「「「さすが秋ちゃん言うことが脳筋。」」」
生徒全員の声がはもる。
しばらくして、正面に向き直った神戸が信幸に聞く。
「で、いつ頃出発ですか?」
「六花と流治が、まだ本調子ではない上に、
準備が必要になったから、明日朝一の予定だ。
ま、着いたらついたで、即ラスボス戦だがな。
お前ら、英気を養いつつ、魔法と剣術の訓練はおろそかにするなよ。」
「「「はい!」」」
「じゃあ、まず坐禅から初めて、模擬戦を3本やろうか。」
「お手柔らかにお願いします。」
勢いよく返事をした生徒に、水を差すようなことをいう紅葉。
げっそりとした顔で、日野がつぶやいた。
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「で、勝算は?」
流治が六花に聞く。
「家族の前ではあんなことを言ったけど、流の言う通り、
リセットした方がましな状況よ。
でも、それでは意味がない上に、管理権限を奪ってしまう恐れがある。
だから、勝率は60%。生徒はともかく。問題は秋姉なのよ。」
「あの人、ムラがあるからな~。」
「ムラがない秋姉は秋姉じゃないわ。」
「それな。で、どこまで解禁する。」
「あんたが作らせていたスーツ、アーマー、戦闘機、戦車。
空間と各種エレメントまでは解禁よ。」
「やっぱあれはばれていたか。」
六花のセリフに苦笑いで返す。
「わからいでか。まあ、備えとしては当然よね。
今後のこともあるし、今回の件でドールと魔法、魂の関係性がわかったら、
別件で依頼を受けていたゲームの話を進めたいのよね。
そのためにも、サンプルとしてあの世界を使いたいから、
あまり、無理な方法をとりたくないのよ。」
「あー。あれか。ま、ここまで用意したら、あとはなるようにしかならんよ。」
「一応システムに依頼をして、私たちの力には制限をかけたから。
そのつもりで。」
「気を付けます。」
「じゃあ、人数分の魔力変換の腕輪と改良版の変身アイテムをもっていきましょうか。」
「Oui。Oui。」




