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トレント

「ほら、刺突が来るぞ!」


名取は信幸の言葉に、後ろから迫る根を横っ飛びでよける。

それにより、トレント本体から距離を開けてしまう。


「ちっ。」


それが焦りを生み、足元が疎かになり、足を根にぶつけ、横に倒れこむ。

それを見た大野がカバーに入り、迫っていた根を盾で防ぐ。


「先輩。落ち着いてください。何も剣技だけで攻める必要はないんですよ。」


そう言われ、自分たちが魔法を使えることを思い出す。

落ち着いて、周囲を見回すと各人が自分自身の戦闘スタイルを確立し、

戦っていた。

神戸が目にも止まらない速さで動き、宮城は立体的な動きで根を躱している。

富士に至っては斬撃を飛ばしているのか、剣を振った先の根や葉が切れて落ちる。


「ふー。ありがとう。落ち着いたよ。」


「いいんです。守りは任してください。」


すくっと、立ち上がると、名取は礼を言いながら、剣を帯電させ切りかかる。

だが、表面が焦げただけで、効果があまりない。


「なっ!おっと。」


それを確認して、剣の腹で防御をしながら、後退をする。


「なら、みんな下がってくれ!」


そう叫ぶと、剣を掲げ、振り下ろす。

すると、トレントは真っ二つになる。


ーズズンー


思いっきり振り下ろしたことで、勢い余って膝を着く。

それともに倦怠感がおそう。


「はぁ、はぁ。この魔法は使いづらい。」


使った名取は剣を杖替わりにかろうじて、膝をついた状態から立ち上がる。

他のメンバーも戦闘が終わったことを確認し、剣をしまい、

何とはなしに名取の周りへと集まる。


「真面目過ぎるからだな。もっと、燃費のいい魔法もあるぞ。

 例えば、光線を打ち出すとかな。今のは剣状に光を維持するのと、

 威力をだすのに、無駄に魔力を込めすぎている。」


信幸が名取に近づきながら、そう声をかける。


「だが、雷がだめなら別の手段、大きいなら出力を上げる。

 そういった、判断はよかったな。それにしても、」


そういって、信幸は生徒たちを見回す。


「ああそうか。水と土の大きな魔法使える奴がいないのか。」


今の戦いで、水で切りかかるものや土で圧殺するものがいないことに疑問を持ち、

属性を見分け、持っているものが少ないことを確認し、納得をする。


「戦って分かったと思うが、お前たちは属性が風に偏っているために、

 ああいった手合いに弱いことが分かったと思う。

 また、硬いやつにも有効打がないことだろう。」


「はい!」


富士が勢いよく挙手をする。


「富士。何だ?」


「はい。ああいった手合いは秋ちゃんや、信さんはどうやって倒すんですか?」


「いい質問だ。紅葉なら、燃やしたり、叩きつぶすだろう。

 俺は木を使って、相手に寄生させ、エネルギーを食う。

 だが、お前たちでは、どちらも難しいな。」


「はい。」


続いて日野が手を上げる。


「日野。」


「はい。風の属性の場合、硬い相手にはどうすれば

 致命打を与えれるのですか。」


「どうすればいいと思う?お前らは人形の場合はちゃんと関節を狙うし、

 恐らく動物でも、そうするのだろう。

 だが、この世界はスライムやさっきみたいなトレントもいる。

 その場合3点ほど風ならではの方法があるが、答えられるか?」


生徒はそう言われて2年以下はうつむいて考えるが、

宮城と神戸は3つと言われ、相当余裕がなかった自分に自嘲する。


「ふむ、3年生は分かるようだな。一人ひとつづつ言ってもらおうか。

 まず、宮城。」


「はい!剣先に力を集中させ、刺突を行うです。」


「そうだな。そうすれば、ビームのようについても良いし、

 同じところを何度もついてもいいな。次、神戸。」


「はい。何度も同じ場所に連続で斬撃を当てるです。

 その際に、薄い刃を飛ばすイメージをするとなおよいと思います。」


「そうだな。鎌鼬、紙、カッターなど薄い刃は良く切れる。

 だから、同じ場所を薄い刃で切るイメージで魔法を行使すると、

 切ることができるかもな。次、名取。」


「はい。空気の弾丸を打ち出すです。回転や鋭さ、大きさを変えることができ、

 状況に応じて応用ができます。」


「そうだな。剣ではイメージが難しいが、手や指から打ち出すイメージで使えば、

 できそうだな。

 ということで、これらの方法で戦えば風でも有効打、

 致命打を与えられるわけだ。

 ま、慣れてくればこんなこともできる。」


そう言って、杖をぐるぐると回し、草むらに向かって、振り下げ、

再び振り上げると、イノシシが空中に飛び上がる。

それに向かって、杖を何度か振るうと輪切りになっていく。


それを生徒は唖然とした顔で見る。


「この技はどの属性でも有効だが。制御の仕方が重要だ。

 何をしたかわかるか。」


そう聞くと名取がおずおずと手を上げた。

それを顎でしゃくって回答を促す。


「えっと。予想なのですが、鞭のような形状にして、最初は太くして、

 輪切りはものすごく細くして、ねじ切ったんですか?」


「正解。よくわかったな。名取なら、わかると思うが、

 この方法は魔力消費が大きい。

 さっきの光の剣を使い続けるようなものだからな。

 なれれば、魔力を込めるタイミングがわかって、消費量も抑えられるが、

 まあ、玄人向けであることは確かだ。よう、修行ってとこだな。

 さて、今日はここまでにしよう。あとは各自魔力操作を磨くように。」


『はい!』


「では、解散。」


そう信幸がいうと、各自、今日の反省をしながら、飛空艇へと歩き始めた。

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