森を突っ切る女教師
「さて行くか。紅葉準備は?」
振り返って、屈伸をする紅葉を見る。
「いいよ。体があったまってきた。」
「頼むから、木は切るなよ。」
ジト目で紅葉を見ると、苦笑をして、目をそらす。
「善処します。」
「それ、善処しない人のセリフ。」
宮城が、紅葉を見る。それもツイッと目をそらして、視線を外す。
「エンデー。どうにかならんか。」
信幸がエンデに泣きつく。
苦笑しながら、紅葉の右肩に手を置く。
「<ルーシー>、<キョウ>。」
すると、エルフのルーシーと武闘家のキョウが腕輪から出てくる。
「えっとー。エンデさん。どうして私なのですか。」
ルーシーが呼んだエンデに問う。
「悪いな。森だから、信幸に協力してくれ。」
拝むような恰好で、申し訳なさそうにルーシーに頼む。
ルーシーは仕方なさそうに弓になり、信幸の肩にかかる。
「で、私は?」
「キョウは紅葉に。紅葉お前は、キョウだけで戦え。魔法もだめだ。」
「えっ。」
言われた紅葉は唖然とし、キョウはニヤリと笑い、
籠手になって、紅葉の腕に着く。
「ほれ。」
そういって、再度紅葉の肩に触れる。すると、何かが紅葉を包み込む。
「なっ。そんな。」
紅葉は自分の体に炎と土を纏おうとして、失敗した。
「せめて、土は。」
「だめだ。木を穿って倒すだろうが。修行だ修行。」
「そんな~。あれでも。」
そう言って、エンデに手のひらを添えてフッと短く息を吐いた。
一瞬キョトンとした顔を全員がしたが、次の瞬間勢いよく後ろへ吹き飛んだ。
吹き飛んだエンデは慌て空間の力で、勢いを殺し、強制的に停止した。
「戦うことに関しては本当に勘がいいな。木は倒すなよ。
あと、邪気を纏っている奴だけな。」
止まったエンデがお腹を押さえながら紅葉にいう。
それを聞いてた紅葉は、ニヤリと笑うと森に向かい、
そして、消えた。
「速いな。じゃあ俺も試すか。」
そういうと信幸は森の入り口の地面に弓を当てる。
「エンデさん。あれに何やっているんですか。」
名取がお腹をさすりながら後ろから歩いてきたエンデに問いかける。
「ルーシーの能力は自然支配。あーやって、地脈と魔術の流れを
読み解いて、木々や植物を動かして、結界を修正しているんだ。」
「へー。中には影響がないんですか?」
富士が問いかける。
「木が移動するからな。景色をあてに進むと迷うかもしれん。」
「大丈夫ですかね。」
「大丈夫だろう。」
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噂をされた、紅葉は木の幹や枝を足場に、立体的な動きで、中心を目指していた。
その動きは誰も目で追えず、邪気を纏った動植物は知らぬ間に消されていた。
それでも、中心に向かっていたつもりがいつの間にか外へと出てしまい、
何度目かの挑戦をしていると思念が飛んできた。
<女神の使いよ。こちらだ。>
その声に導かれるように進むとやっと大樹の前へとたどり着いた。
奥に木をそのまま使った家が見える。
そして、大樹の前には丸まって伏せている大きな狼がいた。




