006、スライムを退治しよう!
「モンスターって、それはつまり……」
「ああいうものだ」
「え?」
無造作にライカが指した方向を見ると――
水色の丸っこい物体がダンジョンを徘徊していた。
「な、なぁに、アレ?」
「ブルースライムだ」
「スライムって、雑魚モンスターの……?」
「出来たばかりであまり餌もないゆえ、あのようなものしか出ない」
と、ライカはちょっと恥ずかしそうに言うのだった。
その心情がぜんぜんわからない俺である。
「あれって、ほっといていいわけ?」
「まあどちらかというと、どうにかしたほうが良いな?」
「じゃあ……」
「だが、わたしがやっても、意味がないのだ。ダンジョンマスターだからな」
ライカは困ったように言った後、ジッと俺を見つめてきた。
「な、なに?」
「ふむ。タケオさん、補佐するゆえ、一つ頼まれてくれまいか?」
「いや、ちょ……まさか!?」
「そう。スライムを倒してもらいたい」
「いや、武器もないし……。っていうか、俺戦士とか勇者じゃないし!?」
俺は首をブンブン振って後ずさった。
「む。それもそうか。準備がいるな」
ライカは納得したようにうなずき、そこでいったんダンジョンを出たのだが。
えらい速さで作業着と安全靴、それに金属バットを買ってくると、
「まずはこれでよろしかろう」
と、再び俺をダンジョンに引きずり込んだのだった。
俺は無理やり着替えさせられ、金属バットを持たされ、スライムの前に。
「初期レベルのダンジョンで、初期レベルのモンスターゆえ、心配無用。さあ、どうぞ」
と、俺はモンスター退治を促されてしまう。
しかし、どうぞと言われても……。
水色のスライム。
よく見ると、半透明の身体の真ん中に丸いボールみたいなものが。
「スライムは中身のコアを潰せば一撃だけど、まあ素人には難しいかも」
ライカは俺の肩に両手を乗せながら、助言めいたことを言う。
「素人にやらせるなよ……」
「何事も最初は素人です。さあ」
「あああ! もう……!」
結局、いつまでもグズグズしていることはできなかった。
「うぎゃああああああああああああ!!」
俺は自分でも引くほどの絶叫をあげて、スライムにバットを振り下ろす。
ぐしゃりと不気味な手触りと、飛び散る粘液。
目を開けると、スライムは半分ほどを崩れながら、それでも動いていた。
「タケオさん、油断されるな! 攻撃されるとスライムは反撃しますよ!?」
「えっ!?」
ライカの言葉通り、ダメージを負ったスライムは身をくねらせて飛びかかってきた。
腹に、ドスンと重たい一撃。
「ぐ、おおおお……」
俺は悶絶してバットを落とし、床に転がってしまった。
そこに、スライムが復讐とばかりに迫ってくる。
この時俺は、一見無害そうな水色生物に、本気でチビリそうになった。




