004、ヒロインの名は『ライカ』
「そういやさー?」
「何かな、主よ」
ネットでボードゲームに夢中だったエルフは、少し嬉しそうに振り返る。
「あの……その、主ってカンベンしてもらえん?」
「ふむ? ここでは、あまり一般的ではないらしいな。奴隷制もない」
「そうそう。変なプレイの一環かと思われるだけだし……」
下手すりゃ人身売買とか疑われかねない。
外国人女性を奴隷化した底辺漫画家……。いや、構図だわ……。
「では、どのように呼ぶべきかな?」
「……名前でいいんじゃね?」
「ふむ。そういえば、主の名前をうかがっていなかった。失礼」
「別にいいけど……」
「では、教えていだけるかな」
「絵馬タケオ。絵馬が苗字で、名前がタケオね。念のため」
「では、今後はタケオ様とお呼びしても?」
「……ごめん、それもカンベンして? せめて『くん』とかさ」
「しかし……」
ライカは納得しない様子。
「いや、こっちの都合を優先してほしいんだわ、お願いだから」
「わかりました。では、せめてタケオさん……と。これでも非礼なのだが……」
うん、これなら。うん。
「……まあ、そうしてくれる? ってか、俺もあんたの名前、知らないんだけど?」
俺が言いたいのはそれだった。
「名前か。そこをうっかりしていたな」
エルフは座り直し、真っすぐに俺を見てきた。
「伝統として、奴隷となったからには元の名前を捨てて、奴隷名を得る必要がある」
「え、そういうもんなの?」
「そうなのだ。なので、タケオさんにつけてほしい」
「急に言われてもなあ……」
エルフの名前……?
うーむ。リリアナ……。どうも違う。イングリッド……。今いち…………。
俺が困っていると、不意に外が暗くなった。
遠くで、雷鳴の音と光がこだまする。
かみなり。いかずち。いなずま……。
雷火。
俺の頭に、ふと漢字二文字が浮かんでしまった。
「ライカってのは……?」
「何でもよいが、響きが良いな。気にいった、感謝する」
そう言って、エルフは俺の手を取り、そっと口づけをする。
「わわ……!」
柔らかい唇の感触に、俺はドギマギした。
よく考えてみれば、絶世の美女で、人外のエルフ。
恋人という単語の意味さえ忘れかけた俺には、強烈すぎた。
思わずひっかり返りそうになった俺を、ふわっとエルフは抱きかかえる。
いや、ライカか……。
「改めて、よろしく頼むぞ。タケオさん……」
「よ、よろしく……お願いします」
思わず敬語の俺に、ライカは遠慮なく唇を重ねてきた。
逃げる間もなく、ベロチュー。
いいのかなあ。
そう思いつつ、ライカの腕から逃れることはできないのだった。
唇を離した後、さてどうなるか、という時。
いきなり、俺の腹は大きく鳴ってしまう。
グーッという、漫画みたいな音……。めっちゃ恥ずかしい……。
「…………あっはっはっは」
ライカは楽しそうに笑い、俺の頭を優しく撫でる。
女の子に撫でられるって、すげえ気持ち良い……。いや、相手が美少女エルフだから?




