045、うちの母ちゃんは冒険者
冒険者となる女性が増え出した――
これ自体は以前から聞いていたニュースである。
しかし、それにまた新たな潮流みたいなものが出てきた……。
俺が最初に知ったのは、実家からの電話。
最近バタバタして、全然連絡を取っていなかった。
そういえば、ライカのことも話していない。
この機会に話そうかなあ、と思った矢先、
<タケちゃん、お母さんねー、冒険者することにしたんよ!>
「はあっ!?」
とんでもない内容に、俺は受話器を取り落としそうになった。
「ぼ、冒険者って、ダンジョンでモンスターと戦うアレか!?」
<そうそう>
「ば、バカ、年考えろよ! 中学生じゃあるまいし、あんなヤクザなこと……」
<いやー、それが直接戦わずに、何か薬とか道具作る仕事もあるらしいんよ>
それはいわゆる、生産職ってやつだろうか?
「いや、それでも母ちゃんそんな技術ねーだろ!?」
<勉強したんよ! 今魔法とかおぼえててねー、簡単な薬作れるよーになったわ>
のんきなことを言っている母に、俺は完全に混乱させられた。
「それ、親父は何て言ってんだよ!」
<お父さんには何も言わせんわ>
ああ……そうだったなあ……。母ちゃんの権力は強かった……。
<簡単な薬でもすぐ売れてねー? だいぶ儲けたわー>
「それ、大丈夫なのか、法律上……」
<大丈夫でしょ、みんなやってるし>
「みんなって、誰だよ」
<ご近所さん、大勢やってるよ?>
うわーーーー…………。
近所のオバハン連中が魔法の薬とか作ってるのか……。
ほとんど魔女集会である。
<今度作った薬送ってあげるから、疲れた時に飲んでみ。よく効くでー?>
「ああ、うん……。ありがと……」
俺はもう何も言う気力がなくなり、適当に返事をして電話を切った。
調べてみると、本当に生産職を副業にする女性が増えているようだ。
冒険者になってもレベル10になるまではビギナー。それは変わりないが……。
メイジやヒーラーのような魔法職であれば、転職可能なものがある。
生産職――『錬金術師』
転職には特殊な施設やアイテムがいるようだったが……。
レベルは上がりにくいが、ジョブスキルはレベルアップしやすい。
錬金術でどんどんアイテムを作るごとに、成長するようだ。
最初期でも、簡単なヒールポーションなどを作れる。
主な原料はスライム中心なので、できないことはない。
ダンジョンでわくものよりは質は落ちるが、大量に作れるのだ。
また容器を作る技術を応用して、アートみたいなこともできるらしい。
しかし、そもそもレベル10まで達するのが大変なはずだが……。
どうも10万ほどで10までレベリングさせる商売があるようだ。
おそらく、母ちゃんもこれを利用したのだろう。
年のいったオバハンをレベリングするのはかなり大変なはずだが。
また、レベル10になっても魔法職になれるとは限らない。
そこが落とし穴みたいだ。
中年過ぎたオバハンがファイターやらレンジャーやらできるもんなのか。
またぞろ、病院の世話になるような気もするが……。




