040、魔法職になってはしゃぐ炭川
気づけば、炭川と共にライカのダンジョンでスライム退治となったわけだが。
「うりゃああ!!!」
炭川は気合十分で死に物狂いでバットを振るう。
まさに、鬼気迫る態度。
見る間に青スライムを叩き潰して、周辺を粘液まみれに。
「先輩も気合入れてくださいよ!?」
バットを手に振り返る炭川に、俺は正直ドン引きである。
「別にお前ひとりでいいんじゃないか?」
と、一応装備した武器防具を空しく思いながら、素直にそう言った。
「そのご立派な鎧とかメイスは飾りですか!?」
「現状はな……」
「軟弱者!!」
「ンなこというなら、少しペース落とせ。こっちが何かする隙が無い」
「まったくもう!」
ブリブリしながら、炭川は回復のポーションをあおる。
獅子奮迅の勢いながら、所詮は本来はただの売れない漫画家。
何度もスライムの反撃を受けたりして、疲弊しているようだ。
やがてスライムの粘液から、魔結晶が出てくる。
「これ、先輩には分けてあげませんからね!?」
魔結晶をかき集めて手持ちの革リュックに放り込む炭川。
「うん。いいよ、全部お前の手柄だから、全部持ってきな?」
「……っていうか、何でお前そんなにがんばるの? 借金でもあるのか?」
「ないですけど。っていうか、燃えません? ファンタジーですよ、RPGですよ?」
「これは厳然たる現実で、ゲームじゃねーけどな……」
「現実だからいいんじゃないですか? しかも、お金にもなるんですよ」
と、興奮の炭川。
「何なら、それの買い取り先も紹介しようか……?」
「新しい商人かあ……。ついでにそっちを開拓するのも悪くないです……ね!」
と、いいながら、炭川は新たにわいたスライムを潰す。
結局、俺はほぼ何もしないまま、黙ってみているだけだった。
「やったーー! ついにレベルアップ!」
終わった後、喜び勇んで叫ぶ炭川を淡い光の粒子が包んだ。
「……おお、やった、やった!? 魔法職や、メイジやーー!!」
測定器を手に、炭川はダンジョンでピョンピョン跳ねるのだった。
なんだかなあ……。
正直見ていて痛々しい。
「彼女にとって、魔法はそこまで特別なものなのですなあ」
と、後ろに控えていたライカは面白そうに言った。
「あれは中二病の延長に近い気がするけどな」
俺はため息をついて、
「回復魔法とか教えてあげたら、あいつ喜ぶんと違うかね?」
「考えておきましょう」
と、笑うライカ。
「……で、魔法はもう使えるのか?」
「え?」
俺が尋ねると、炭川はキョトンとして黙ってしまう。
それからまた測定器を睨んだり、
「はー!」
とか気合を込めて手を突き出しするが、何も起こらない。
「そりゃ魔力をただ得ただけでは、使えんでしょうよ」
ライカは頭を振り、一人で騒いでる炭川に近づくのだった。




