037、引田健吾の述懐――その4
引きこもりでニートの時は――
(金さえあれば。とにかく、金があれば……)
と、いつも考えていた。
しかし、いざヴィオーラのおかげで金に不自由しなくなると、どうだろう。
特に金を使いたいという気持ちはわいてこなかった。
もちろん遠慮もあったかもしれない。
だが、金を使ってしたいことがなくなってしまったのだ。
性欲はヴィオーラという最高の女が常にそばにいるので、常に消費状態。
「徹底的に鍛えてあげますよ」
と、ヴィオーラは手練手管で毎晩俺をしごき倒した。
色んな意味で。
日中暇なのだが、ネットもあまりしない。
いつしか、庭の手入れをしたり、掃除したり、諾々と時間を過ごすように。
また、本を読んだりする。
本はヴィオーラがあれこれ買い込んでくるので、自分では買わない。
難解な専門書も多いが、小説なんかもたくさんある。
俺はハリウッド映画にもなったファンタジーの古典を読んでみた。
意外に読みやすく、かつ深くて面白い。
映画もすごかったが、原作はそれとはまた違う面白さがあった。
「私たちとはだいぶ違うけど、エルフの物語は面白いわねえ」
と、ヴィオーラは言っていた。
確かに、創作物にある優美で森とか自然の民というイメージのエルフ。
あまり、欲望とかそういう要素の低そうなイメージ。
でも、ヴィオーラは性欲も食欲もたっぷりある。
むしろそれを積極的に楽しんでいるようだった。
「エルフヘイムの民は、みんなこんなものよ」
つまり、彼女からすればエルフとは全体的に享楽的な種族らしい。
現代の文化、ネットとか映画とか音楽も楽しんでいる。
感触としてはなんだろう?
森の貴人というよりは、ギリシャ神話の神に近い感じかもしれん。
でも、そんなヴィオーラと過ごすうちに、世の中は変わり始めた。
ダンジョン。
異空間に通じているらしい未知の場所が現れ、ダークエルフまで出てきた。
しかし、俺には見かけ以外エルフとダークエルフは差はないように思える。
気づけば。
俺は近くのジムに毎日通うようになっていた。
金は全部ヴィオーラが出してくれる。
「私に任せれば、もっと効率の良い鍛えかたをしてあげるのに」
ということだった。
それはもちろんありがたく受けたが、それはそれ。これはこれ。
俺は漫然と体を鍛えながら、ふつふつとある欲動が蠢くのを感じた。
ダンジョンに行ってみたい。
モンスターが出て危険だという。冒険者になれば探検できるという。
冒険者になってみたい。
言葉はバカみたいだが、抑えようのない気持ちだった。
「やりたいのなら、やってみればよろしくてよ。ただし、私も一緒なら」
というわけで、俺は決意を固めてダークエルフのサイトで契約した。
ごく簡単なあっさりとした契約の後――
俺はあんなに従い、ヴィオーラと共にダンジョンに向かったのだった。
そして、すっかりそこでの『冒険』にはまってしまった。
気づけば、測定器でレベル10にまでなっていて……。
次より主人公視点に戻ります。新しい女性キャラも登場予定!




