036、引田健吾の述懐――その3
俺の親を説得? してから。
ヴィオーラはノートパソコンを買ってきた何事かし始めた。
どうも、株だか投資だからしい。
そんなもんに手を出して大丈夫か? と、思ったのだが――
ヴィオーラは見る見るうちに不労所得を稼ぎ出してしまった。
「思わぬお金が入ったので、どうぞ生活費がわりに」
などと言って、また両親に大金を渡す。
翌月も、その翌々月も、ポンを金を渡して、すましている。
他にも、
「これはお世話になっているお礼に……」
と、靴やバッグ、また高い酒をプレゼントして渡したりした。
最初はギャンギャン言った親たちも、
「ヴィオーラさんにはいつも助かってるわぁ」
「いっそ、うちのバカ息子を貰ってくれんやろか」
などと、ネコナデ声を出す始末だった。
あまりの手の平に返しに、俺は何とも言い難い気分だった。
飼い猫まで彼女には気持ち悪いくらい媚びへつらう。
というか、猫はヴィオーラに撫でられるとグニャグニャになるのだった。
しかし、まあヴィオーラには助かりすぎている。
基本家にいて、ネットで株の売買などをしているのだが。
それ以外がパッパと家事を行い、家は見違えるようになった。
俺の部屋のみならず、家中どこもきれいになり、狭い庭も手入れバッチリ。
当然近所では噂になる。
だが、人当たりが良いというか、人たらしっぽいヴィオーラには無傷。
奇異な目では見られるが、大よそ好意的な視線に変わってしまうのだった。
まあ、しょっちゅうお裾分けと言って料理や果物、菓子を近所に配るし。
で。俺はどうしているか。
正直することは何もなかった。
時々職安にでも行けば、と親は言うが、あくまで口だけだ。
ヴィオーラも何かしろとは言わなかった。
逆に、
「何かすることはありますか?」
と、聞いてくる始末だった。
全然実感がないけど、こいつは俺の奴隷らしい。
でも、そんな感じはないよな。ゼロ。
むしろ、俺よりも堂々としている、金持ちだし。その上すごい美女だ。
試しに、
「金が欲しい」
と言えば、とりあえずはこれだけ、といきなり10万ほど渡してきた。
「カードでしたらすぐにも使えますが?」
さらにクレジットカードを見せてくるヴィオーラに、俺は絶句する。
「いや、いい。十分です、はい」
と、返事をするのがやっとだった。
しばし俺はずっとやっていたソシャゲも億劫になり、しばらくボーッと過ごす。
だが、その間にもヴィオーラは動いていた。
まずは俺は風呂に連れていかれてしまう。
今まではほとんど入らなかった風呂で、体を隅々まで現れた。
気持ちいいと同時に、かなり情けなかったので、次からは一人で入ったが。
気づけば、身だしなみを整え、髪を切られ、部屋着も変わってしまった。
そして、本当に無意識のうちに家から出るようになってしまう。
最初は、近くのコンビニに行くだけだったが。




