034、引田健吾の述懐――その1
やっと日が落ちて、夜がきて、俺はホッとした。
引きこもりになってから、昼はいつも憂鬱だ。
かといって、夜が快適なわけじゃないけど。
俺はいつもの掲示板で荒らしをしてから、ふと疲れて目を閉じた。
その時、部屋に気配がする。
散らかって、掃除もしてない我ながら汚い部屋。
ベッドに、誰か女が座っている。
紫の明るい髪をした、猫のような印象の美女だった。いや、美少女?
年齢はわからないけど、若いことは確かに思えた。
「え? 誰?」
「おはつにお目にかかるわね、ご主人様」
中性的な服装をした女は、俺を見て微笑む。
俺に笑いかける女がいるなんて……。
いや、待て――
よく見ると、女の耳は先端がとがっていて細長い。
というか、エルフじゃん……。
ああ、何だ夢かと俺は思った。確信した。
いわゆる明晰夢ってやつだ。それなら遠慮することない。
「私は遠い国から、修業と勉強のために奴隷になりにきたの。で、占いで選んだご主人様が、あなたってわけ」
エルフはきれいな指を俺に向け、嫣然と微笑む。
「奴隷になったからには、奴隷名を名乗らないといけないのだけど、決めてくださる?」
そういう設定か。夢なのに変なところあるな。
いや、夢なんてそんなもんか……?
「え、じゃあ……そうだな。」
そこで俺は無駄な知識を引っ張り出し、イタリア語で行くことに決めた。
髪の毛が紫だから、イタリア語で紫――
「ヴィオーラだ」
「けっこう。では、今日より私はヴィオーラね」
エルフは足を組み替え、また微笑んだ。
「きょ、今日から俺がご主人様だ」
「ええ」
「だ、だったら、脱げ。ど、奴隷だろ?」
「わかりましたわ」
俺がどもりながら命令すると、エルフことヴィオーラはあっさり服を脱ぎだした。
「全部脱ぐの?」
「ぜ、全部だ」
言われた通り、ヴィオーラはぜんらになった。
ほっそりした印象だったけど、脱ぐとすごい……!
あ、下の毛はなかった。
「脱いだ後はどうすればいいのかしら?」
全裸になったヴィオーラは挑発するように言った。
「じゃ、じゃあベッドで横になれ……!」
俺は次第にわけがわからなくなってきた。
これが夢なら、さめないうちに楽しみたい……。
俺は噛みつくようにヴィオーラにむしゃぶりつく。
まるで野の花のような、何とも言えない良い香り。
それに、驚くような柔らかさ、手触り。
できれば、永遠に覚めないでくれ。
必死でそう願いながら、俺はヴィオーラの身体を貪った。
彼女の顔には、終始不思議な微笑が浮かんでいて……。




