033、引きこもりと美女の怪しい噂
「そういえば、ライカさんはどこから来られたはったん?」
食後のお茶を出しながら、K母が尋ねる。
「スメールです。ご存じないでしょうね」
と、ライカは微笑して答えた。
「日本語上手やねえ。日本人みたいやわ」
「ふふ。それはどうもです」
「ああ、外国人言うたら、引田さんところにも外人さんいてるらしいわ」
「ケンちゃんって、ああ、あの……」
引田という名前に、Kは少し微妙そうな顔をした。
「知り合いの人?」
「近所の人ですよ。俺よりも年上で、昔はゲームの貸し借りとかしてました」
俺が聞くと、Kは懐かしそうに言った。
「ケンちゃん、ずっと引きこもってるらしいけど、大丈夫なんかい?」
と、K父。
「それが、何か住んでる外人さんが面倒みてくれてるらしいんよ」
「ほー、外人のホームヘルパーさんかいな」
「どうも違うらしいんやけどね……。何か不思議な人らしいわ」
と、そこでK母はライカを見る。
「その人は、わたしに似ていると?」
「いーえ。あたしもちょっと見たことあるけど、髪も肌の色もぜんぜん……。せやねんけど、何やろ、何となく似てるような気もするなあ」
K母は首をひねるのだった。
(まさか……)
と、俺は思った。
さっきテレビにも出ていたように、他にもエルフは日本にいるのだろう。
あるいは、他の種族かもしれない。
「そういうたら、あの外人さんも日本語ペラペラやったわあ。勉強してんねんなあ」
K母は思い出したように言って、感心している。
「どんな人ですか?」
つい、俺は重ねて尋ねてしまう。
「えーー、タケオさん、こんな美人の彼女がいてるのに。浮気はあかんよ?」
と、K母は笑いだすが、教えてくれて、
「そうやねえ、こうスラリとして猫みたいな感じで……。髪染めてるのかな、ちょっと紫? っぽい感じやったわ。品がようて、お金持ちの家なんかなあ」
どことなく、ライカと似ているような気もする。
彼女も本来はエルフの国のお姫様らしいしな。
すると、玄関のチャイムが鳴ったようだった。
「あらぁ、お客さん」
K母があわてて立ち上がる。
玄関から話声が聞こえてきたが、やがてそれは笑い声に変わる。
「カレー作ったからお裾分けやて。あそこのカレー美味しいんよねえ」
K母は小さな鍋を手に戻ってくると、テーブルのお菓子を手にして取って返す。
「……よろしゅうな。おおきに」
どうやら客は帰ったようだった。
ふと見ると、いつの間にかライカが消えていた。
あれえ……? と、思っていると、またふわりと戻ってくる。
「――やはり、エルフでしたよ。多分わたしと同じ身の上ですね」
と、密かにライカはささやく。
ふむ。ということは、例の女性は引きこもりとかいう男の――
(奴隷……?)
ちょっと好奇心が刺激されたが、我が身に置き換えると少し萎えた。




