029、後輩から相談を受ける
ダークエルフ・エレクトの宣言以来――
俺の周辺でも、冒険者となる連中がチラホラ出てきた。
エレクトは、契約して冒険者となった者たちを積極的にアシスト。
例えばレベルに合わせたダンジョンへのワープ。
これのおかげで関係に邪魔されずにダンジョン探索できる。
手に入れた魔結晶やアイテムなども、買い取る商人など紹介してくれた。
多くは魔法使いや錬金術師、ネクロマンサー、中にはドワーフの鍛冶職も。
逆にそういった連中は冒険者にポーションや武器防具を売る。
まさにRPGの世界なのだった。
これに大して、国は建前上の規制とか何とかをやっている。
だけど、聞くやつはいない。
さて、そんな中で俺の後輩にあたる漫画家のKが相談してきた。
「タケオさん、僕冒険者になろうと思うんです」
関西出身のKはスポーツ漫画を描きたいと言っている元バスケ部。
「あんまりうまくなかったですけどね」
と謙遜するが、割とスポーツマンタイプでさわやかな感じの好青年である。
「冒険者って、危なくないか?」
あふれる動画でも、強いモンスターに襲われてひどい目にあうものも出てきた。
逆に強げなモンスターを倒していく動画もあるが。
「そうなんですけど、うまくすれば割と良い金になるらしくて」
「お茶はいかが?」
俺の部屋に来た彼に、ライカはお茶とお菓子を出す。
「あ、すみません」
ライカと顔見知りだが、Kはライカにちょっと苦手意識があるらしい。
「ちょっと美人さんすぎて、怖いんですよ」
ということだった。
気をきかせてか、ライカは俺たちが話している間隅のほうで座っている。
「だけど、今はライバルも多くてけっこう大変っぽいぞ」
「知ってます。でも、それでもスライムとか最低ランクのモンスターでも、素材とか出てくる」結晶とかを確実に買い取ってくれるらしいんですよ」
お茶を飲むKは真剣だ。
「そんなにすぐ金がいるのか?」
「はい、実は……」
話すところによれば、Kのおばあさんが認知症になってしまったらしい。
家族で話し合って施設に入れることになったが、色々物入りで――
「それで次男の僕にもいくら出してくれと言うてきたんです」
と、Kはしょんぼりしている。
「うーむ……。しかし、何で俺に相談を?」
「いや、聞いた話ではタケオさんはそっち方面の知り合いとか多いと聞いてきたんで」
「そっち方面って何だよ……」
まあ、おそらくドワーフとかリッチとか、そのへんなのだろう。
「しかしまあ、確かに一応冒険者相手に商売している知り合いはいる」
前に装備を用意してもらったドワーフのワグタカを思い浮かべる。
「しかし、その手の武器とかって高いぞ?」
むしろ、それに使う金を実家に送った方が良いのでは?
「一応バットとか用意してます」
何か悲壮な覚悟の表情でKはうなずく。
俺は、どうするべきなのだろうか。
「金ですみことなら、少し持ち合わせがあるぞ」
いきなりライカは言って、ゴムで束ねた高額紙幣を放り出した。
Kの顔から、目玉が飛び出る。もちろん比喩だ。




