021、ドワーフ娘の引っ越し
「えーんやらや、えーんやらや……♪」
妙なメロディを口ずさみながら、ドワーフのワグタカは鎚を振るう。
同時にいくつもの光が走り、魔法陣のようなものが複数空中に待った。
見る間に金属が加工され、形になっていく。
「まずはこんなものでどうでがんしょ?」
そして完成したのは、見事な円形の盾だった。
「ダンジョンでとったインゴットでやってみたでごんすよ。魔法銅製ですから、強度も重さもまずまずのはずでがんす」
それから細かい部分を微調整され、俺の腕に装備された。
「うん。こんなもん初めて触るのに動かしやすい。いいね、これ」
俺はラウンドシールドを本音で称賛した。
「ふーん。なかなかやるな。見直したぞ」
ライカは感心した顔で言った。
「誉められるとこそばゆいでがんす。今はこんなもんでがんすが、もっと材料とお金があればさらに品質の良い物を造れるでがんす」
ワグタカは胸を張り、ガッツポーズをしてみせた。
汗まみれの腕は小さいががっしりと筋肉がついていて、いかにも強そうである。
「よろしかったら、その盾の代金は無しでもよろしいでがんす」
「いいの?」
「ほい。ただ、その代わりと言っては何ですが、お願いが……」
「一応は聞くよ。なに?」
「実はこのダンジョンに住まわせてほしいんでがんす」
「はあ……?」
「アホか」
俺は意味が良くわからず、ライカは鼻を鳴らす。
「いい加減、根無し草の宿無しもきつくなってきたでがんす。どうか、一つ……」
「無理だな」
俺が何か言う前に、ライカは拒否した。
「そこを何とか」
「無理なものは無理だ。ただし――」
ライカはスッと人差し指を立てて、
「適当な住居に住めるよう、手伝ってやろう」
「おお、それをお願いできるでがんすか? いやあ、この国は宿一つ泊まるにもゴチャゴチャややこしいし、役人にもうるさいし、困っていたでがんす」
「そんなこと、できるの?」
「書類だの手続きだのは、割とどうにでもできますよ。まあ、問題を起こさず家賃をちゃんと払えば大丈夫かと」
こういうわけで、世話した住居というのが――
「では、本日よりお隣ということで。以後よろしくお願いするでがんす」
後日、ちょうど空き部屋だったうちの隣に、ワグタカが入ったのである。
彼女はカップめんの蕎麦を土産に挨拶に来た。
「別にいいけど、何でまたこのアパートなわけ?」
「家賃が安かったせいですねえ」
と、ライカはちょっと苦笑する。
「それに、土地が好条件でした」
「え?」
好条件という言葉に、俺は首をひねった。
駅からは遠いし、日当たりもそんなに良くない。
「ここは魔力が集中しやすいので、その手の金属を扱うドワーフには好ましいのでしょう」
「魔力ねえ……」
そういえば、このアパートではちょくちょく金縛りにあったりしたなあ。




