017、アンデット娘の来訪
「ん?」
俺がチャイムに反応して立ち上がろうとすると――
そっと、ライカは俺の肩を押して動きを止めた。
「なに……?」
「しっ」
ライカは静かに人差し指を唇にあて、油断のない表情で立ち上がった。
何事だ……?
俺は緊張してきて、やたらドキドキする胸を押さえた。
そして、もう一度チャイムが鳴る。
俺がビクリとすると、ライカはそっとドアを開く。
一体何が来たというのだろ?
俺もそっと後ろからドアの向こうを覗いてみる。
と、そこには。
一言で言うと、灰色の肌をした無表情な女が立っていた。
同じく灰色のフードをかぶり、魔法使いみたいなマントを羽織っている。
「どなた?」
ライカも女と同じように無表情で尋ねる。
「ボクは魔法使いの、ストロア。少し用立ててほしいもがあって来た」
女は淡々と抑揚のない声で言う。
よく見ると見た目は若い。まだ少女……女子高生くらいの年齢に見える。
「魔法使い?」
ライカは鼻白んだ顔で、冷たく言った。
「お前、死人の気配がするぞ? それに、その肌――」
「……ああ。まあ」
指摘され、ストロアはフードをバサリととった。
少年のようなショートヘアに、金色の瞳をした美しい少女。
スラリとした体形で、無表情ながら可愛いというより精悍な顔立ち。
もっと表情が豊かだったら、むしろ女の子にモテそうなタイプだ。
「君の言う通り、僕はアンデット。リッチだ……」
リッチ? 金持ち……?
では、ないんだろうな、多分。
そういうタイプのアンデットモンスターをどっかで見た覚えがある。
「リッチって、どんなアンデットだっけ? 魔法が得意?」
「ええ。力のある魔法使いが冥府の力で生きながらアンデットとなった存在です」
「ふーむ……」
読んだ資料か何だと、魔法使い風の格好をした骸骨かミイラだったかな。
しかし、今目の前にいるのはゾンビっぽい肌の色を除けばほとんど人間。
「噂では人間がダークエルフになろうとして失敗した、とも聞いていますが」
「お恥ずかしい……」
ライカの言葉に、ストロアは頭を掻く仕草をした。
「不老長生を目指した結果、半端な形になってしまい、しょうもないアンデットになった」
「ってことは、やっぱり死んでる……?」
俺が思わずつぶやくと、
「それは半分正しくて、半分間違い。ややこしいので詳しい説明はカンベン」
「ああ、うん」
俺としてもあまり難しい話は好きではない。
「……で、何か欲しくて来たとか言ってたけど?」
「そう、それ」
ストロアは革袋を取り出してきた。
「魔結晶があったら譲ってほしい。お礼はできる限りするつもり……」
と、袋の中身を手の平にこぼす。それは、怪しい輝きの金貨――




