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タウン七不思議

タウン七不思議。枕の神様

作者: はるのの

大切な人に、ちゃんと言葉で感謝していますか?

「眠れないな。」

最近布団に入るのが怖い。

こうやって暗い天井を見つめ、旦那の寝息を聞いていると、息が苦しくなる。寝返りを打つ布団の音がやけに耳について、旦那の顔を見た。

起こしたかな?と思う反面、そんな訳ないと思い。気にしすぎる自分が馬鹿みたいに思えて、また息が苦しい。

最近、この人生に身の置き所が無いように感じて、イヤ、身の置き所を無くしてしまいたくなる。

更年期かなぁと心の中でワザと語尾を伸ばしてみる。明日も仕事なのに、早く寝なくてはと、寝返りをもう一度うって、頭を回した私の枕には、もう一つ頭が乗っていた。

「きゃー」とか叫べないもので、私はこういう怪異にあった時は一番に気絶するのがいいと、友達には公言していたが、気を失うことは出来なかった。

そっと身を引いて、枕から自分の頭を落としたらその頭は消えていた。大きなため息とともに、震える手で枕をパンパンと叩いてみても、何も起こらない。体から力が抜けてもう一度「はぁぁ」と大きな声が出た。

いけないいけない、旦那を起こしてしまうと慌てて口を閉じた。寝ないと。気のせいかも。どちらにしても、もう、枕は使えない。そっと、布団を旦那の側まで引っ張ってクッションを枕にして寝る事にする。

目を瞑るとさっき見た頭の映像が浮かんで、目を瞑る事が出来なくなってしまった。なんだ、アレは?そう思い巡らすうちにふと、思いついたのは確か「タウンの七不思議」だ。そうだ、あの頭はそのうちの一つではなかったか?

どうすれば、よかった?あれはなんだった?井戸端会議の話を思い出す。あれは「枕の神様」だ。そうだ「枕の神様」だ。そう繰り返しながら、私は深い眠りについた。


次の日の夜。旦那は相変わらずすぐに寝入った様子。

子供がどんなに夜泣いても起きなかった。

私が熱でうなされていても起きなかった。「なんで、起きてくれないの」と聞いたら「揺すれば、起きるよ」と言ったけど。そんなことまでして、起きてもらうのはなんだか悪くて出来なかった。気づいて欲しかったのに。眠れない私に気づいて欲しいのに。あなたはぐっすり眠る。

もう、何十年もきっとこれからも、あなたは私の何にも気づいてくれないから、私はもう居なくてもいいんじゃないかと思ってる。

便利屋さんやお手伝いさんなら、金払って雇えばいい。


私は昨日使っていた自分の枕と旦那が使っている枕をそっとそっと変えた。乱暴にしても起きないのはわかっているのに、そっと変えた。


多分これで大丈夫。寝ている間に私の声があの人の脳味噌まで届く。変えた旦那の枕には、旦那の頭の他にもう一つの凹みがある。そこには、多分枕の神様の頭が乗っている。私の頭を、写し取った枕の神様がいるはずだ。

きっと明日から、旦那は私にこう言うだろう。

「おはよう。良く眠れたかい?」「帰るときに連絡いれるから」「駅まで送ってくれてありがとう」

そう思ってみると、なんて普通のことなんだろう。こんなにも、当たり前のことを言ってもらってなかったんだ。

しばらく枕の神様が飽きるまで、ここにいてもらおう。

少々旦那の体調が悪くなっても仕方がない。何十年も私の存在を軽んじていたのだから。気づかなかった、あなたが悪い。


次考え中

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