愛しいあなたのことを思い出すと消えたくなる。
『フェリカの銀の髪はとても綺麗だ。日に透けるとキラキラと光っている』
『あら、ディーン様の金の髪もキラキラしてますわよ』
『あははそうだな』
学園の中庭の噴水は私とディーン様のお気に入りの場所でした。
私の銀の髪をやさしく指先で梳いて、愛しているよと耳元でディーン様がやさしく囁く。
一番幸せな時間でした。
『待ち遠しい、あと一年後か』
『はい学園の卒業式で18になったら私たちは結婚できるのですわね』
『君に触れたい、キスをして、そして……いややはり結ばれるのは婚姻の儀を挙げてからだ。君を愛しているフェリカ』
『私もディーン様を愛しております』
まっすぐに優しい青い目で私を見て、愛しいと髪を一房持って口づけて下さいましたわ。
ディーン様の手を握り締めると、愛しているよと耳元で囁いてくださいました。
私、ディーン様のお気に障ることをしたのでしょうか?
私はディーン様だけを愛しております。
ディーン様しか瞳に映しておりませんでしたわ。
『愛している。婚姻の儀が終わったらそうだな、旅行にでも行こうか?』
『あら、一国の王太子殿下が気軽に旅行なんていけますの?』
『君が好きだと言っていた君の母上の故郷に行こう。秋になると麦畑が黄金のようで美しいとフェリカは小さいときによく自慢したではないか』
『あは、そうでしたわね。あの光景は絶対にディーン様にもお見せしたいですわ』
麦畑がさわさわと風になびく光景は美しかったです。
夕焼けの時がまた美しい、私はディーン様にお見せしたいとずっと言っていたのです。
覚えていてくださった! それがとてもうれしかったことを覚えています。
結婚したらどうしようとよく語りましたわよね。
王太子妃としての教養を学ばないとと言った私に、フェリカはそのままで十分だとやさしく微笑まれたディーン様。
あなたのためにずっとずっと勉強をしてまいりました。
あなたのだめだけです。
『ディーン様、ずっとずっと私ディーン様を愛しております』
『私もだよフェリカ』
『そうですわね。私はディーン様が王太子殿下でなかったしてもディーン様がディーン様であるということだけで愛しい。絶対に好きになりました』
『私も君が婚約者でなかったとしても、君を愛しただろう。君の寂しい心を私は癒したい。寂しがりやのフェリカ』
ああ、私が寂しがりやだとあなただけが知っていましたの。
私は父からも愛されず、使用人からも機械的に世話をされ、誰からも、いえディーン様以外から愛を向けられたことはなかったのです。
母は愛してくれていましたが、それ以外の人は私のことを公爵令嬢としか見ていませんでした。
『私、跡取りを絶対に産みます』
『絶対にといわなくてもいい、できなかったらそれでいい。フェリカ、君だけが欲しいんだ。でも子供は二人は欲しいな。男の子と女の子、あくまで希望だ。もしできなければ沢山縁戚はいる養子をとればって、私たちは結婚する前から何を話しているんだ。おかしいな』
『そうですわね』
私たちはおかしいと笑いあいました。
ディーン様は私の顎に手をかけて、ゆっくりと唇を近づけ、柔らかい唇同士が触れた瞬間、私はいとおしさだけを感じたのです。
はじめてのキスでした。
これは誓いだといったディーン様。
永遠に私を愛するといったディーン様。
私だけを愛してくれるといったのは嘘だったのですか?
追憶をすればするほど心が痛むのです。
私何もしてません。貴方に何もしていませんわ。
何がお気に召さなかったのか、お伺いしたいです。
ああでも心が痛い、狂いそうです。
いえもう狂っております。
私は領地の片隅にある屋敷の寝台に座りながら、狂ったように笑い続けました。
出来上がった屋敷を見て、もうすぐ籠の鳥が手に入ると私はただ笑ったのでした。