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哀れな公爵令嬢は、愚かな王太子の姿を見て神に祈る。

「フェリカ?」


「あなたにその愛称でよばれたくありません」


 ディーン様の様子を遠見で見ていると、何か空しくなってきました。

 確かに行動を見ていないとといったのは私ですが……。


 アリスさんにそっと会いに行く様子は間抜けでしたわ。

 こうやって盗み見している私も間抜けですが。

 横にレイモンド様がいますがますますイライラしてきましたわ。


「フェリカ、ディーンのことなど忘れて僕と一緒に」


 手を伸ばして笑いかけるレイモンド様、冷たい目で私は彼を睨むと怖い怖いと両手をあげます。


「私は不実な方は嫌いですの」


「ディーンも不実だろ?」


「それ以上無駄口をたたくと、殺しますわよ?」


 私は手にもった薬を見せて笑います。すると怖い怖いと身を引くレイモンド様。


 私の領地の片隅に建てたものはほぼ出来上がっていました。

 私はその中で彼と二人で愛しいディーン様の行動を見ています。


「鎖付きのへえ、これなんて……」


「黙っていてください」


 お父様も陛下の言われることならとほぼ私の言い分など聞かずに了承してくださいました。

 娘に甘い公爵などと言われていますが、母の思い出しか見ていない人です。


 母の形見を見たいといって素直にみせてくれたほうが驚きましたが、どうも母の遺言だったようです。


 私が物心ついて、自分の隠していたことを知りたいと思ったらどうかおしえてあげて……なんて。


 母の書付をみましたが不思議に動揺はしませんでした。


 母が祖父母を殺したということや、母が病死ではないということ。

 永遠を信じる? と母が寂しげに笑って言っていた意味を書付で知ることになるなんて思いませんでした。


 真実、愛する人ができるようなら平凡な幸せを求めなさいと書いていましたが、普通であることが難しいということはその通りでした。

 

 普通なんて無理です。

 大好きな人と一緒に結婚して、子供を産んで……そんな平凡な幸せなんてしょせん砂上の楼閣でした。

 お母さまもそうだったんでしょう?


「ディーン嬉しそうだな」


「これ以上無駄口をたたくなら、本当に殺します」


「おお怖い」


 別にアリスさんに接近させる人なんてレイモンド様ではなくてもいいわけです。

 実際、私はこの人とは相性が悪いです。


 陛下が適任だというのならそうでしょうが……どうも上っ面だけしか相手を見ないと思ったレイモンド様がアリスさんを見て誘惑するには微妙な相手といったことが気がかりではありましたわ。


 彼は一人の人を一途に愛する女性が好きだそうです。

 なら取り巻きさんたちはそんな人なのですか? と尋ねたらそうだと言われました。


 ならフィリア様を忘れて幸せを探しては? と言った私に冷たい目でフィリア以上はいないと言われましたが……。

 不実という印象は消せません。

 フィリア様はよく彼の浮気について相談していましたから。

 言葉にすればよかったんです。

 でも言葉にしてもどうしようもないこともありました。

 それが私とディーン様。


 水晶玉の中で笑う彼とアリスさんを見ていると、アリスさんを殺したい衝動にかられ、打ち消すのに時間を要しました。

 多分もう狂っている。

 理性で抑えつけるにはかなり辛い。


 だってアリスさんを殺しても、ディーン様は私のものにはなりません。

 彼を再び私のものにしたいなら最善ではない。

 憎んでもらえるかもしれませんけど、ディーン様の大切なものを皆消してしまった方が簡単ですかしら? ああお願いです神さま。

 私を助けてください。

 祈っても……叶えられないでしょうが。


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