銀の令嬢は金の鳥をついに捕らえた。
「やぁ、ディーン。こんなところで何をしているんだ?」
「レイモンド、お前」
「僕は新しい彼女に会いに行くところなんだけど、こんな町でディーンと会うなんて、お、もしかして」
「黙れ、女狂い」
町の裏路地でにこっと笑いレイモンド様がディーン様に声をかけて引き留めています。
身構えるディーン様。
一応いとこなので害意はないと判断したようですが。
強い目でレイモンド様をにらみつけています。
「ホワイトミスト」
ぼそっとレイモンド様が呪文を唱えると、見ていた私ともう一人魔法使いの男性が魔法を唱えます。
白い霧があたりを覆うと、慌ててディーン様が対抗呪文を唱えようとしますが……。
「ダークミスト!」
二人で詠唱した黒い霧はとても濃く、ディーン様が驚いて一瞬目を閉じます。するとそれはディーン様を覆いつくし、ディーン様がひるんだ瞬間、魔法使いの男性がディーン様を羽交い絞めにしました。
私が慌てて薬を含んだ布を口に当てます。
ああまるで悪者ですわね。
一応私たちの魔力を3人合わせてディーン様と同じくらい、しかも武術は私もレイモンド様もからきしでした。レイモンド様がディーン様以下と自分でいうのはこれもありました。
魔法使いの男性は元武官なので、身のこなしは素早かったです。
ふいをつかないとどうしようもない位、ディーン様はお強いのですわ。
気を一瞬で失い倒れるディーン様。うふふ、私がくすくすと笑うと男性はディーン様を担ぎ上げ、レイモンド様は後始末はしておくと笑います。
アリスさんのところに行ってもらう手はずです。
「フェリーシカ様、移動魔法を発動させます」
「お願いいたします」
男性はディーン様を担ぎ上げたまま、魔法の詠唱に入ります。
彼がいなければたぶんディーン様を捕らえられなかったでしょう。
飲み物に薬を入れる手段も考えましたが、即効性があるものは匂いがきつくばれる可能性があり、しかも毒にディーン様は耐性があるので、ある程度の薬は効かないのです。
なら一番効果が強いものをとなるとこれしかありませんでした。
「行きますよ」
「はい」
黒い光が私たちを覆うと、視界が闇に覆われました。愛しいディーン様の金の髪を触り、私がクスクスと笑うと男性は少し困ったような顔をされます。
移動の魔法の途中で私がディーン様、愛しいあなたを手に入れたとつぶやき笑うともっと困った顔をされています。
うふふ、とても楽しいです。
「こちらでよろしいのですねフェリーシカ様?」
「ええ、この屋敷です」
「陛下のご命令ですから、私はここでのことは何も見なかったということで……」
「ええありがとうございます」
口が堅い方を紹介してくれて助かりました。
何も聞かず、私が用意した屋敷にディーン様を運び込み、寝台にディーン様を寝かせてくれましたわ。
一礼して去っていく男性。
一応王太子としての教育を受けているディーン様を捕らえるのは計画を立てないと難しかったです。
だって、他の方にこのことがわかったらいけませんものね。
あははやっと二人きりですわ。
金の鳥を捕らえましたの。
「ディーン様愛していますわ」
着替えさせて、鎖を手と足につけます。うふふとてもお似合いです。
金の鎖にしましたのよ。
本来は鎖なんて屋敷にかかっている魔法の属性からしたらいらないのですが、やはり罪人は鎖につながないとだめです。
「うふふ、早く目を覚ましてくださいなディーン様」
屋敷といっても2階建て、あと地下です。
私たちの部屋は1階、2階はそうですわね。内緒ですわ今はまだ。
私とディーン様の愛の巣です。
私は鼻歌を歌いながら、リンゴの皮をむきます。ソファに座り、歌いながらいつも皮をむいていて、そばにいたのはレイモンド様でしたが、今は世界で一番愛しいディーン様。
うれしい、楽しいです。
歌を歌って愛しいディーン様の柔らかい金の髪に口づけしました。
厨房でパンも焼きましたの、うふふ素晴らしく良い匂いです。
あなたのために私は愛ある食事を作りましょう。ああとても心が浮き立ちます。
厨房で血のしたたるレアの肉も用意しました。あら前菜を用意しませんでしたわ。
うふふ、それもまたいいでしょう。
クローゼット、寝台、机、着替えなどもあります。身の回りに必要なものは他はすべて用意しました。
うふふふ、ディーン様に不自由をさせていけませんから。
「……う」
目がうっすらと開きました。ああとても青い目、まるで空の色のようですわ。
うふふ金の鳥を捕まえました。この手の中におりますの。
私たちはずっとずっと永遠にいっしょなのです。