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白い小鳥は消えてしまった。金の鳥は確実に手に入れましょう。

  お休みに入りました。

 ああもうすぐですわ。もうすぐ手に入る金の鳥が。

 だって人知れず出かけるディーン様を攫うのなら一番いい機会ですもの。


「うふふ、ご招待したら、ディーン様どんなお顔をされますかしら」


「うーん、怒るんじゃないか」


「そうですわね」


 屋敷はきれいに掃除して、ディーン様がお好きな食材も用意しました。

 鼻歌を歌いながら、私が着替えなどもこれでいいかしらと言うとあいつ怒るのは確かだとレイモンド様はため息をつきます。


「あら、ディーン様は割と順応性は高いですわ」


「さすがにここに順応はしないだろう」


「あら、そうですかしら?」


「まあ、こんなところに招待しようとする人間がいるなんて想像もしてないだろう」


「そうですわね」


 私は何気なくレイモンド様を見ると、しかし趣味が悪いと寝台の鎖とあとは私が用意した様々なものを見ています。

 人一人を……これ以上はやめましょう。


「うふふ、ディーン様とアリスさん、宿屋ってあはははは」


「笑いながら言うと怖いが……」


「笑うしかありませんもの」


 いつもいつも学園で二人を見て、もう心が動揺することはありません。

 いえもうディーン様のお心が戻らないことはわかりましたから。


 いいえ……ここにご招待すればわかりません。

 私たちは二人きり、ずっとずっと二人きりで過ごすのです。

 そうすれば……。


「うふふ、楽しいです」


 私は笑いながら、ディーン様のためにと用意したものを見ているとあいつ本当に君の変化にすら気が付いていないのか? と小さくつぶやきます。

 気が付いてはいるようですが、さすがに私がここまでするとは思っていないでしょう。


「うふふ、あはは、楽しいです。早く早くいらしてディーン様」


「どうやってディーンをここに?」


「そうですわね、レイモンド様にも手伝ってもらいます」


「僕も? まあ、手伝うが、そういう話だし」


「はい」


 そうですわね。お休みに入ったらもっと頻繁に密会するでしょうから、その時を狙いましょうと私が笑うと、ああ、それはもう計画していたことだしなと頷きます。レイモンド様は手伝うが、さすがにあいつを傷つけるなよと言ってきます。

 一応いとこ同士だから気を使ってますのね。


「傷つけるってか弱い女性の私がどうやって?」


「いやまあ、そうだな……」


「うふふ、あはは、ディーン様待っていてくださいまし」


 私が笑ってまた歌いだすと、レイモンド様はここに招待って、あいつの顔が見ものだなと意地悪く笑いました。

 私はこれ以外の方法はもう考えられなかったのです。

 やめようとしたこともありましたが、もう引き返せないことを知ったのです。


 だってアリスさんとずっと一緒で、私の変化にだって気が付かないふりをしているディーン様ですもの。


 早くしないと私は完全にくるってしまう。

 籠の鳥を早く閉じ込めないといけません。


「疲れました。でも愛しています」


「君は」


「ディーン様はまだこの世界に存在します。だからこと愛しい、私はあの方を愛しています。もうこの考えは止められないのです。少しでも自分を止めようとしていましたが、もう無理です」


「アリスは……」


「あなたを愛しているのですか?」


「まだだな、まだ足りない」


「そうですか、あの方は地位がある男性ならだれでもいいようですよ」


「へえ、いいことを聞いた」


 楽しそうに一瞬唇をゆがめて笑うレイモンド様。

 私の言葉に何か思いついたようです。

 冷たくしているとどうも気になるようで、最近アリスさんのほうがから連絡が来るようです。


 しかしあの方、ディーン様のいとこであるレイモンド様から言い寄られて、悪い気がしないとかどういう精神を持っておられるのでしょう?

 調査結果からみると、男性を落とす手管がお上手のようでした。


 私は一人しかいらないのに、複数の男性からちやほやされたいらしいですが全く理解できません。


「そうかなるほど、地位があるねえ」


「レイモンド様?」


「ありがとう。これでうまくいきそうだ」


「お願いします」


「ああ」


 どうも思いついたことがあるようですが、唇をゆがませて笑うレイモンド様を見て、どんな考えを持ったのか気になりましたが、聞くことすら面倒くさく私は黙り込みました。

 あのアリスさんをどうやって誘惑しているかなんて、ああそうだディーン様に見せてあげたら面白いかもしれませんわね。







「薬は即効性があるこれを使って、後はそうですわね。暫く意識を失わせるこれも足して」


 歌いながら私は薬の瓶を用意します。

 宿屋に向かう日にちは掴んでいますから、次の密会に鳥を捕まえましょう。


「ああ心が浮き立ちます」


 とても嬉しい。

 今まで迷いすぎてました。でも私が鳥を捕まえて、籠に入れてそうして愛でる。

 ああ、ずっとずっと一緒に過ごすのです。

 朝と昼と夜と。


「うふふ、あははははは」


 笑うことしかできませんでした。

 屋敷の一室で薬を選び、陛下が手配してくれた魔法使いとともに鳥を捕まえにいく準備をします。

 誘い出すのはレイモンド様。

 白い鳥は死んでしまいましたが、金の鳥は死なせないようにしなければ。


「うふふ、そうですわ。お肉はしたたるレア、メインディッシュはそれ、デザートは林檎を用意しましょうね」


 そういえば水しか飲まなくても人は生きられるらしいですわね。

 なら、お食事をせずに何日耐えられるか見てもいいかもしれません。


「ああ、金の鳥を捕まえて、ずっと一緒にいれば……」


 どこまでが正気でどこまでが狂気か?

 あの人と私だけの世界があればもうそれだけでいい。

 二人きりでずっとずっと一緒にいて幸せに暮らすのです。

 陛下に言った時、楽しそうに笑われておられましたわね。


「誰も私達を知らない所で二人きり、ずっと永遠に一緒」


 考えるだけで心が高揚します。

 今までためらっていたのがうそみたいです。

 レイモンド様がアリスさんを籠絡する様子を見せてあげましょう。

 完全に落ちた瞬間を見せたらどんな顔をされるかしら? どうしてずっとためらっていたのかしら?

 私の中のもう一人の私はもう何も言わない。


「あははは、うふふ」


 薬の瓶を手に持ち笑う私は、在りし日のお母様にそっくりで、鏡はもう見たくありませんでした。

 お母様も嬉しそうに笑って、薬の瓶を手に踊っていました。

 それは病気で亡くなる数日前の出来事。


 私も笑いながら踊ります。とても嬉しい、楽しい。

 想像だけでこれほど楽しいなら、現実はもっと楽しいでしょう。


「うふふ、待っていてくださいねディーン様」


 ああ、愛しています。永遠に。

 ずっとずっと私の生命が散る日まで愛していますわ。

 ディーン様、永久に、私は貴方だけを。

 ずっとずっと幼い時から、貴方が王太子でなくても私は貴方を愛しています。


 さぁ、金の鳥を捕らえにいきましょう。


出来上がった籠は万全、あなたはどんな顔をされるのでしょう?

 私たちは籠の中でずっと二人きりになるのです。


 ああ心が解放されるようです。どうして悩んでいたのでしょう? もっと早くこうすればよかった。

 さあ、これから青い鳥ではなく金の鳥をとらえにいきましょう。



3/21 次回は21時予約投稿してます。

金の鳥は捕らえられます。

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