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愛しい王太子と静かに公爵令嬢は語り合う。

 あれからフィリア様のことが噂にまた上がり、アリスさんがディーン様に慰められているのをみました。私を皆が遠巻きにして、誰も話しかけてきません。

 表面上は今まで通り、私の悪口を言うのは表立ってはやめたみたいです。


 私が泣いたことにより、どうも少しだけ皆の考えが変わったようです。

 アリスさんが私をいじめているという噂、しかしどうも私が泣いたことにより、本当にそうだろうか? という疑念が少しだけ生まれたようです。

 私が気が弱くおとなしいといわれていたという人もいました。


 いつもフィリア様と一緒で、あまり他の人とお話しすることもなく引っ込み思案。

 お友達といえる人もいましたが、裏切られ一人ぼっち。

 フィリア様やディーン様と一緒のことが多く、あまり話もしない人だった。

 言葉少なで控えめだったと。


 アリスさんが噂を流してからはどうも庶民を下に見て、ディーン様を盗られた嫉妬から罪もないアリスさんを虐める悪い女、侯爵令嬢、権力を振りかざす悪役令嬢と言われていましたが。

 

「フェリカ」


「あら、どうされましたディーン様?」


 表面上は普通通り、違うのは私がディーン様と行動しなくなったということ、アリスさんと人目をはばからず最近はディーン様は一緒だということでしょうか?

 婚約破棄はもうすぐだという噂は消えていません。


 図書室で話しかけてきたディーン様に私は笑顔を向けます。


「この前は泣かせてしまって……」


「別に構いませんわ。私が泣くのはいつものことですわよ」


「君は泣き虫だったな」


「ええ」


 どうも罪悪感が出てきたようです。ディーン様に私は座られません? と椅子をすすめるとああと私の前の椅子に座りました。


「うふふ、図書室で過ごすのなんて久しぶりですわね」


「ああ」


「そういえば……」


「君はレイモンドと……」


「陛下がどうもレイモンド様をエスコート役にしたり、いろいろされているようですが、どうも気を使わせてしまっているようです。ディーン様がお忙しいからとレイモンド様を話し相手にとか……ふう、誤解されそうなのでお断りしましたわよ」


「そうなのか」


「はい、フィリア様がお亡くなりになってから私には親しいお友達もいませんから、気にされているようですが、自分のお気に入りの甥を話し相手になんて陛下もお考えが……一応私たちは男と女ですわよ。人から見たらどう思われるか」


「そうだな」


 ふふっとディーン様が笑うと、フィリア様を裏切るようなことはしませんわよと私も笑います。

 そうだなとうなずくディーン様。

 私お言葉を聞いて、レイモンドのやつそういえば伯爵令嬢に言い寄っているらしいといやそうに顔をゆがめてディーン様は吐き捨てました。


「ああいつものことですわよ」


「君はあいつの……」


「絶対にありえませんわよ。私はフィリア様によく相談されていましたわ。レイモンド様は不実だって、私は不実な方は苦手ですのよ」


「そうか」


 ふふ、私が揶揄したのはあなたのことなのにそうかとただうなずくディーン様。

 ああ、そういえば二人きりで話をしたのは久しぶりですわね。


「もう夏ですわね」


「ああ、しかしアリスのことは……」


「そのことはもう終わったはずですわ。私はお友達を作るつもりはありませんの。そして私はアリスさんを虐めても害してもいませんわよ」


 私の言葉に今度は黙り込むディーン様。

 ああ、信用してはくださらない。いくら話してももう理解はしていただけないようです。


「そういえば、私が誕生日にあげたあの小鳥は」


「ああ、死にました」


「え?」


「病気でしょうか? 死んでしまいました。申し訳ありません」


「いや、病気なら仕方ない」


 私が飼っていた猫が死んで悲しんでいた二年前、白い小鳥をプレゼントしてくれました。

 しかし私はディーン様の心変わりを知った後、世話をするのと怠ってしまい死なせてしまったのです。

 数日餌や水をあげないまま鳥かごにいた白い鳥はそのまま死んでしまいました。

 

 ディーン様からの贈り物の小鳥が、などと一瞬動揺しましたが、しかし死んだものは帰ってくるわけもなく、私は庭に小鳥を埋めてお墓を立てました。


「今度は違うものを……」


「もういいですわ」


 どうしたって帰っては来ません。

 ああ、あの白い小鳥は鳥かごで死んでしまった。

 私が作った鳥かごの中にディーン様を閉じ込めて、死なせてしまわないようにしなければ。


「え?」


「結構です。生き物は死んでしまいますもの」


「ああそうだな」


 私たちの会話は上っ面のものです。

 今はもうただの会話です。


 私の言葉の裏側に気も付かず、ディーン様がうなずいたとき、私はただ絶望だけしか感じませんでした。

ここで金の鳥を捕らえたらどうかしら? ああだめだめ、ばれるような方法はいけませんわ。

 魔法も武術も私はこの方にはかないませんもの。薬を使うのも今は不自然ですしね。

 私はクスクスと笑うと、ディーン様は少しだけ目を細めてこちらを見ていました。

 鳥かごを見た貴方はどんな顔をされるのでしょうね?




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