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愚かな王太子殿下は悪役令嬢とお茶会をする。

「フェリカ、話がある」


「はいなんでしょうか? ディーン様」


 久しぶりに私の寮の部屋にディーン様が訪ねてこられました。

 行動は追っているので知っていましたが、知らない振りで招き入れ微笑みます。

 お茶を用意してお茶受けはどうしましょう? と微笑んで尋ねるといらないとそっけなく返されました。


 うふふ、お薬でも……さすがに不味いですか。


「アリスを階段から突き落としたと言っていた件だが、あれはアリスが……」


「はい?」


 あらこの紅茶、お味がいまいちですわね。なんてにっこり笑って話すとはぐらかすなと言われました。

 ディーン様はお茶に手をつけず、アリスがフェリカと言い争いをしたために足を踏み外してしまったと言っていると言いだしたのです。


「どういうことですの?」


「フェリカ、アリスを脅したと聞いたが」


「脅す?」


「仲良くなんてなりたくない、しつこく言うようならギルバート殿の力を使って、アリスを学園から追放すると」


「追放? お父様にはそのような力はありませんわよ。実際、一ケ月前お会いしましたが、相変わらずやる気がない様子でしたわ。私の頼みなど聞いてくれるはずがありません」


 まあ、違う頼みは聞いてくれましたが、ディーン様には内緒ですもの。

 しかしアリスさんを追放ねぇ、そんなことは思いつきませんでした。

 だってお父様に言ったら、顔を歪めて馬鹿か? と言われるのが関の山です。


「しかしユーリカ殿が……」


「ああはい、あまりにもしつこいのでただ言っただけです。私のことを悪役令嬢などと言ったのでつい……私も腹をたてることくらいはあります。ユーリカ様は死んだ母のことをよく私にお話されるのはディーン様も知っておられますでしょう?」


「ああ」


「母のことは私にとっては心の傷です。なのにユーリカ様はずっとそのことを噂されています。私だって傷つき、イラつくことくらいはありますわ」


「そうだな……」


 私がゆっくりとお茶を飲み干し、寂しげに笑うと、悪かったと謝られるディーン様。

 しかしこう言う所は甘いです。私もですが。

 私に心が残っているというより、女性に甘いからでしょうね。

 寂しげにしていると、あまり責められないようですの。

 私の過去もご存じですし。


「脅すつもりも、父の権力とやらも使うつもりはありませんわ。それにお父様は相変わらずです。お母様の墓の前で独り言を言って、お母様のお部屋にこもったり、私と一年に数回しかお会いになられません」


「相変わらずのようだな……」


「ええ、なのでその点はご安心ください。後陛下が婚姻の儀を早めると言われましたが、お断りしました。さすがに17歳の現在、慣例を破り、婚姻することはよろしくないことくらいはわかります」


 ディーン様がほっとしたように息を吐きました。

 実際、この会話をするだけで疲れます。

 ぼろがでないように、破棄される原因を作らない様に……私は時々、お話すればディーン様がよそよそしい原因がわかるかと何も知らないときにお話をしましたがいつもはぐらかされてましたわね。


 青い目が私をまっすぐにとらえます。私はお茶のお代わりは? と尋ねるといらないと即答です。


「アリスは寂しいと……」


「私も寂しいです」


「君はどうしてそう冷たくなったんだ?」


「さあ?」


「レイモンドと最近……」


「陛下がディーン様が忙しいようだからとレイモンド様を介して御伝言などをされているだけです。フィリア様の婚約者のレイモンド様と私がどうこうしているなどと考えられます? あり得ませんわ。私はフィリア様が死ぬ所を見ていますのよ。止められませんでした。思い出すだけで辛いです」


 私は助けようと湖に飛び込もうとして、侍女たちに止められました。

 もう間に会わないと……。レイモンド様は助けようとして湖に入って亡きがらを引き上げられました。

 王宮の中庭の出来事でしたもの。


「ああそうだなフィリアが……」


「裏切れませんわフィリア様を、それにレイモンド様のことは苦手です。フィリア様が死ぬ原因になった方ですもの」


「君はレイモンドを苦手だと言っていたな」


「ええ、けれども陛下がエスコート役のディーン様がお忙しいようだからと使いにされますのよ。陛下もお身内しか御信用されませんから」


「ああそうだな、いつも身内しか……いや血縁ですら信用されないが」


 陛下は人間を信用されていません。

 だけどまだ身内のことは信用されている振りをされています。

 だからこの言葉は説得力があるようでした。


 しかし面倒ですわね。

 共謀者ではありましたが、一々仲を疑われては不義のネタにされかねません。

 アリスさんを誘惑も支障があります。考えないと駄目です。


「後は何かお話はありますの?」


「いや」


「そうですか、なら新しくクッキーを焼きましたの。お食べに……」


「いや急いでいるので結構、では失礼する」


「ええではごきげんよう」


 まるでよそよそしい会話をして別れる私達、私は笑顔を顔に張り付けてお見送りしました。

 しかし、破棄をする理由を探されているとは思いましたが……愚かですわディーン様。

 絶対に破棄なんてしてあげません。


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