表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

5、商店街連盟事務所

 魚屋の男の教えに従って、通りを突き進むと、ミソノ商会の看板があった。思ったよりも小さな店構えだ。かなり建てつけの悪そうな一軒家で、隣の建物と一緒になって少し傾いている。


隣の建物も何かの商店だった。一瞥したところ、木製の置時計が並んでいる。時計屋だろうか。


ミソノ商店は、というと、印鑑を扱う店のようだった。よろず証印承りますと書いてある。俺は、ガタガタと軋む扉を開けた。


「いらっしゃい」


 低く、上品だがどこか不機嫌そうな声が聞こえた。60代後半ぐらいだろうか。背の低い、痩せた白髪の男が椅子に座っていた。


「何か御入り用ですか?」


 眼鏡の奥に潜んだ細い瞳は、口元の笑顔ほど笑ってはいない。俺は一瞬ひるみつつ、口を開いた。


「あの。芝原と申します。旅をしているものでして、初めてこの街に参りました。それで、道などがあまりわからないので、何か地図のようなものをいただけないかと」

「あぁ、なるほど」


 男が頷き、


「ここにはないから、商店街連盟の事務所に来るといい」


 と言った。立ち上がり、歩き出す男の後をあわてて追う。男は、向かいの通りの角にある小さな家屋の前で止まった。


「シャッターを開けるから、少し待ちなさい」


 半分ほど降りていた、シャッターを下から持ち上げる。金属のきしむ音を伴って、錆びたシャッターが上がった。


 俺は、へぇ、と思った。この世界にも、シャッターがあるのか。


 最初、街の様子を見たときは、土壁が主体であるために、近代的には見えなかったが、よくよく観察すると、金属も機械的なものも存在しているようだ。ただ単に、スラム的な薄汚さを感じるということか。


 ディストピア映画で描かれるアジア都市のような雰囲気が、いちばん近いかもしれないな。


 そんなことを考えていると、男が、


「入りなさい」


と言った。俺は会釈して、商店街連盟事務所の扉をくぐった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ