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「……ぷっ、ぷはははははっ! あーっはっはっはっはっ! ひーっひゃはははははっ! くっくっくっくっ……くはははっはっは……はっ、はらっ……いたひ……ひひゃっ!」


 ネオン街に近い寂れた公園で俺たちはクレハさんに全てを話した。

 そして笑われた。



 クレハさんは公園のベンチに転がりながら足をばたつかせる。まるで子供のような振る舞いで、近くにいたホームレスらしき人も何事かと顔を上げたが、すぐに自分の寝床らしきベンチに寝そべった。

「ふひゃっ、ひゃはははははっ! ひーっひっひひゃっ……ひっ……ひーっ……もうダメっ、はらいたひ……」

「……あの、これ……解いて……」


「くひゃひゃひゃひゃひゃっ! ふっふっふはっははははっ! くひっ……くひぃ……ひぃ……ふひぃ……ふぅ……はぁ……。……あー、久しぶりに笑った。面白かった」

 これでもかという程に笑い転げたクレハさんは、ようやく落ち着きを取り戻しつつある。

 ある程度は予想していたが、ここまで笑われるとは……。やはり俺たちは馬鹿なのか。世界中に多くいる被害者たちの中でも類を見ない程の馬鹿なのか。



「……いやぁー、凄いな。従者シリーズを半分ずつ食べるとそんなことになるのか。なんで基準が太陽なんだ? おまえたちに限る現象だろうか……」

「従者シリーズってなんですか?」

「おまえたちに渡したパンの総称さ。重要なのは術式で、触媒はなんでもいいからな。たまたま持ってたのがパンだっただけだ」

 そういえば、あのパンは近くのパン屋のパンだったな。だからこそ俺たちは信じることが出来なかった。

 だが、光っていたパンを食べるなんて、子供の頃とはいえ馬鹿なことだったか。


「それにしても、面白いことをしてくれるな。従者シリーズはある程度完成したと思ってたんだが、予想外の新発見だ。わからんことだらけだ。今度色々と試してみよう」

 クレハさんはベンチにふんぞり返りながらそんなことを言う。

 俺たちのせいで被害者が増えるようだ。ごめんなさい、今後の被害者たち。だが多少は責任も感じても、今大事なことは俺たちの呪いを解くこと。たとえ世界を敵に回してもこの呪縛から解放されたい。

「それで……この呪いみたいな魔法を解いてもらえないでしょうか」

「契約を破棄したいのか? 面白くていいじゃないか」

「よくないですよ。俺たちはもう耐えられないんです」

「そうなのか……うーん……どうしたものか……」



 クレハさんは腕組みをして目を瞑り、なにやら考え込んでしまった。時折ブツブツと独り言が聞こえてくるが、内容までは聞き取れない。

 そして随分と時間が経ち、ようやくクレハさんは口を開いた。

「……いやな、久しぶりに笑わせてもらった礼に術を解いてやりたいのは山々なんだが、もう五年も経ってるとな……術が魂に深く結びついてしまって色々と難しいんだ」

「そんな……」

「まぁ待て、解けないわけじゃない。……ただ、解くと契約してから今日までの一切の記憶が一緒に消えてしまう。それでもいいというなら解くが」

「……それは……キツイ……」

「それと、もう一つの解決策といってはなんだが……契約を上書きすれば今の状態から抜け出すことは出来るな」

「どういうことですか?」


「つまり……もう一度従者シリーズをどちらかに食べさせる。そうすれば現状のどちらも主であり従者であるという関係から抜け出せる。もっとも、食べてしまった方は一生奴隷として生きてくことになるが」

 好きなのを選べ。そう問いかけるようにクレハさんは俺たちを見る。

 やはり都合よく元通りという風にはいかなかったか。俺たちはこの三択の中から今後の人生を変えるような選択をしなければならない。



「一時間、時間をやろう。私は小腹が空いたから、ちょっくら飯を食ってくる」

 そう言って軽快な足取りで公園を出て行った。

 こんなことになった元凶だというのに、まるで悪びれた素振りはなく、根本的な性格の悪さが伺える。


 マスターが言うように、クレハさんに出会い関わってしまったことが不幸そのものなのだろう。


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