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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[第1章]下校中にて
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(1)-3


「あり……得ない」

 パネルの映像を見ながら、小さく息を呑み、目を見開く小柄な少女。

 心なしか身体が震えているように見える。

「はっ! 何かおっしゃいましたか? 中将」

「……いや、何でもない。すまない、大佐」

 緑色のワンピースのような服を着ている少女は、脇にいる頭2つ分ぐらい背が高い大男にパネルを返す。

 時折吹き抜ける風が金色の髪を揺らす。

「ああ、確かに、〈鍵〉を持つと言われている人間が、あのような、……何というか、我々の世界で言う『落ちこぼれ』のようですな。我々の命がけの任務とは全く不釣り合いな――」

 タケトは、「最大望遠」と表示されたパネルに映っている、大きな金属の物体の脇で友人、であろうか、に慰められるように肩を叩かれている少年の姿を見ながら、先ほどエリスの口から出た、らしくない物言い、見たことのない表情の意味を、落胆と解釈した。

「『器』など、どうでも良いであろう。我々の任務は〈鍵〉の奪取なのだ。〈鍵〉さえ持っていれば何でもよいのだ」

 タケトの言葉を遮り、エリス。

「はっ! そうでありましたな。しかし、エミリ……少佐の観測のおかげとはいえ、こうもあっさりと見つかるとは。しかし、……まいりましたな、うれしい誤算というか、完全な準備不――」

 パネルに書かれた「桜井拓磨・県立春日高校1年10組」と書かれた顔写真付きの情報をスクロールさせながらタケト。

「明日の夕刻、作戦を遂行する」

 再び言葉を遮り、エリスはため息をついた。

「はっ! いえ、……ですから、まだ部隊は本日出発の予定であり、我々は本部設営場所の現認をしている最中です。最速で移送、本部の設営、部隊編成したとしても、2日、……いや、一日半はかかります」

「問題ない。私1人で作戦は遂行する」

「中将直々にですか?」

 エリスはタケトに向き直った。感情が無い、いつもの表情。

 タケトは、しかし、その表情にホッとする。

「何か問題があるか? 敵はすでに陽界におり、現時点でも〈鍵〉を探していることだろう。観測能力ではエミリ少佐の方が遥かに勝っていたことは幸運と呼ぶべきだが、運ぶべき荷物を部隊準備中に敵に捕られました、では、本国に説明が出来まい? 現時点で立案可能な最も効率的な作戦だ」

 淡々と紡ぐその言葉に、タケトは反論の余地がなかった。

 エリスが1人で作戦行動をすることに、何ら戦術的問題はない。

 そして、部隊編成を待っていられない。エリスの指摘通り、今この瞬間に敵が見つけるかもしれない。一刻の猶予もないのだ。

「しかし、なぜ夕刻なのでしょう?」

 タケトは直接的な疑問を口にする。

「あの人間は、朝晩単独で行動している。登校、と言ったかな。そこに書いてあったではないか。明日の夕刻であれば、部隊が終結するころには、作戦は終了しているであろう。それまでは監視しておく」

「はっ! 確かに、無用な騒ぎを避けられる、かつ、効率的な最善な策かと。……あ、本当だ」

 タケトの指の先には「平日朝7時、および18時に単独行動。ただし、朝の時間ばらつきは極めて大きい」と書かれている。

 先ほどのチラ見で、よくそこまで把握できるものだ、と、改めてエリス能力に感心する。

「これ以上長居は無用だ。少佐達に合流するぞ」

 エリスは、そう言うと、ポケットから紙を取り出した。


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