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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[第5章]過去と現在(いま)と……
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(5)覚悟

 うっそうと茂る木々の中、春日高校の制服を着た男女が2人、道無き道を進んでいる。

 金色の髪の少女の方が、後ろを振り向いた。

「少佐、後どのぐらいだ?」

 エリスが声をかける。

「あと500メートルほどです」

 エミリが、手の平サイズの四角い物を見ながら、前に向かって言う。

 表面には地形図のような物が表示されており、三角形のマークが点滅している。

 拓磨が周りを見渡すと、エリスと拓磨を中心にして、左右に等間隔で、周りを警戒しながら歩いている兵士の姿が見える。

「エリス?」

 拓磨が、前を進むエリスに声をかけた。

「何だ」

 前を向いたまま、エリス。

「この先に、……あるの?」

 拓磨は周囲に視線を走らせながら、聞く。

 子供の頃、じいちゃんの神社によく遊びに来た。

 子供の頃というか、つい最近までよく来ていたものだ。

 その拓磨でさえ、神殿の裏に道があり、その先に階段、それが、このうっそうと茂る森へと続いているとは、知らなかった。

「ああ。もうすぐだ」

 先ほどから握られている手に、少しだけ力が入る。

 その感触から、エリスと拓磨は、お互いが緊張していることを感じた。

(なあ、エリス)

 拓磨はエリスに近づくと、耳元で囁く。

(な、何だ)

(契約しても、何も変わらないね)

(あ、あたりまえであろう。目に見えて判る変化があってたまるか)

 エリスの頬が紅く染まる。

(うん、だけど、これじゃあ、人間同士と変わらないって言うか、もっと、こう、何か、神秘的なものを想像していたんだけど)

 エリスは、深々とため息をついた。

(拓磨……)

(うん?)

(その小説とやらに何が書いてあったのか知らないが、現実とは、こんなものだ)

(こんなものかなぁ……)

 拓磨は、ため息をつき空を見上げたが、拓磨の感覚に1つだけおぼろげに残っていることがある。

 あの時、エリスが拓磨の耳元で拓磨の名を初めて口にしたとき、拓磨の身体の奥底で、何かが脈を打ったのだ。

 ただし、同時に拓磨の鼓動は跳ね上がり、内なる感情が爆発したため、それが『何か』だったのか、ただ単に興奮による動悸だったのか、今となってはよく分からない。

 拓磨は不意にそのときのことを思い出し、顔が火照ってくるのを感じた。

 突然、グンと何かに引っ張られ、我に返る。

 思考を現実に戻すと、拓磨の手が後ろに引っ張られており、その先には半眼でこちらを見ているエリスがいた。

「拓磨、どこまで行くつもりだ」

 気づくと、拓磨は半径が20メートルぐらいのだだっ広い野原の真ん中に立っていた。

 何の遮蔽物もなく降り注ぐ太陽の光がまぶしい。

 原っぱを取り囲むようにして、木々が生い茂っており、その陰から兵士の姿が見え隠れする。

「ここなの?」

「そうだ」

「中将、既に光学結界は展開済み、準備は出来ています」

 エミリの声に、拓磨は不覚にもエミリの存在を忘れていたことに気づき、慌ててエリスから手を離す。

「拓磨、隠さなくてもいいよ。もう、公知の事実だから」

 エミリは白い歯を見せた。

 気まずさでエミリから目をそらすと、その視線の先で、木の陰から白い歯がぽつぽつと見えている。

「!」

 拓磨は、自分の失態が最大級に達しているのを自覚し、いきなり鼓動が速くなった。

「我々は、皆、エリス中将を、中将としてではなく、エリス個人として慕っているのだ。だから、中将に関わることなら、隠すこと自体が不可能だぞ」

 ここで、エミリはぽんっと拓磨の肩を叩く。

「当然、師団のアイドル的存在に手を出したのだから、それだけの覚悟があったんだろうがな」

 ――聞いてない! 聞いてないぞ、そんなこと!

 拓磨は救いの目をエリスに向けるが、エリスは肩をすくめただけで、黙ったままだ。

 ――はめられた!

 拓磨は生還してからの事を想像し、身震いした。

 まあ、生きて還れれば……の話だけど


「中将、半径100メートルのエリアへの結界が間もなく完成します。念には念を入れ、作戦開始時刻をもって、半径15メートルのエリアにも結界を施します。これで、地球自体が破壊でもしない限り、空間への影響は無いと思います」

 表情を改めたエミリが、パネルを見ながらさりげなく言っているが、とてつもないことをやろうとしているのだと、拓磨は悟る。

「すまない。……それと、少佐」

「心得ています。中将がそう仰ると思い、本国への移送陣は展開済みです。それに、必要最小限の兵を残し、残りは既に本国に移送済みです。何があっても兵士に犠牲は出ません」

 エミリは、口元を少しゆがめると、付け加える。

「……まあ、残留を巡って、壮絶なバトルが繰り広げられたのですが」

「すまない。少佐。最期まで苦労をかける」

 エリスの言葉に、エミリは笑った。

「中将、『最期』ではありません。私は、中将の説明で、十分な勝算があると判断したから、作戦参謀代行として作戦を認可したのです。必ず、2人とも生きて還ってきてください。正直、私も、からかい甲斐のある人間がいなくなるのは困ります」

 そう言うと、エミリはニヤニヤしながら拓磨を見た。

 再び身震いする拓磨。


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