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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[第5章]過去と現在(いま)と……
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(4)決意

 朝靄が漂う中、拓磨と共に作戦室に入ったエリスは、物々しい雰囲気を感じた。

「約束は守ったぞ」

 エリスは、作戦室の脇で姿勢を正す若い兵士に声をかけながら、その雰囲気の原因を探した。

 作戦室のテーブルの前には、机に向き合うようにしてエミリが直立不動で立っている。

 椅子には誰も座っていないのだが。

「?」

 エリスは、首を傾げながらエミリの脇を通り過ぎ、テーブルに着いた。

 顔を上げ、エミリと目があった瞬間、エリスは物々しい雰囲気の原因を発見する。

 エミリは、なにやら思い詰めたような面持ちで、エリスを見下ろしていた。

「エミリ少佐、こ――」

「中将!」

 エリスの言葉を遮り、エミリが固い声を上げる。

「な、何だ」

 エミリの真意を測りかね、エリスは曖昧に答える。ちらり、と拓磨がエミリの斜め後ろの椅子に着くのを確認しながら。

「ここに集結している兵士全員……6346名の意思を確認しました!」

「意志、……とは?」

「我々の中で、軍法会議部に申し出るものはいません!」

「その話は……」

 エリスは、机に視線を落とす。

 何もない机。

 ――そうか、タケトはもう居ないのであったな

 エリスは、ぼんやりと考える。

「判っています。作戦行動の一部始終を、中将が包み隠さず本国に報告なさっていることは。……ですから、その覚悟についても、昨夜話し合いました」

「覚悟、……とは?」

「本国が、どうしても中将を処分するの言うのであれば、……そうであれば、」

 エミリは一旦呼吸を整えると、

「我々6346名の兵を持って、本国を制圧する所存です! 中将が率いる第十三科学系戦術師団であれば、作戦成功率は95%を超えます! ですからっ、中将には今後も我々の指揮を執っていただきたい! その意志と覚悟を伝えに参りました!」

 ここまで一気に喋り、エリスをじっと見た。

 エリスは虚をつかれ、救いを求めるように拓磨の方を見る。

 拓磨は僅かに口の端を上げ、微笑んだ。

 ――ああ、そうだ、そうであったな

 エリスは、危うくエミリの雰囲気に呑まれそうになるのを、かろうじて防いだ。


 エリスは小さくため息をつくと、エミリを見上げる。

「少佐、大変光栄な申し出ではあるが、……それは出来ない。また、皆を危険に晒すその発言、聞かなかったことにしたい」

「中将! し――」

 エリスは軽く左手を挙げ、エミリを制すると、言葉を続ける。

「少佐達は、本国に帰るがよい」

「少佐達……って、中将はどうなされるおつもりですか?」

「私は、……ここに残る。あ、心配することはない。〈狭間〉は正常化する。だから、少佐達は本国に戻り、その功績を讃えられると良い。誰も、……処分は受けないであろう」

「中将っ!」

 エミリが、戸惑いと悲愴感の入り交じった声を上げる。

「昨晩、拓磨と決めたのだ」

「ち……?」

 エミリは言葉を失う。

 聞きたいことよりも、衝撃の方が大きかった。

 エリスが、拓磨の名前を呼んでいることが……。

 だが、同時に、昨晩何があったのか、容易に想像できた。

「……少佐の言いたいことは、解っているつもりだ。最近は、ずいぶん心配をかけたからな。すまないと思っている」

「中将、ご存じで……」

 エミリは表情を動かす。

「自分の事ぐらい、自分が一番よく解っている。そこまで支配されてしまっていたら、今頃、部隊は壊滅していただろう。……いや、そんなことを言う資格はないか、すでに、かけがえのない者達を失っているのだからな」

「中将……」

 タケトのことを思い出し、エミリの目頭が熱くなるが、それを別の感情で押さえ込む。


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