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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[第5章]過去と現在(いま)と……
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(2)勇気

『兄の友達が鬼を飼っている』


 そんな話を友達の隼から聞いたのは、拓磨が6歳の時だった。

 普段から、隼のホラにつきあわされ、例えば、『エイリアンの死体を見た』と言われて沼地へ行けば、そこには狸の死骸があった、と言うように毎回空振りで終わっている。

 だから、そんな話を聞かされても、拓磨は、またいつものが始まった、と思ったが、そこは小学生、仮に狸の死骸であっても十分に楽しめるのだから、隼に促されるままについて行ったのだ。

 途中、じいちゃんの家である白峰神社の前を通り過ぎ、その横の山に入っていった。

 山に入って歩くこと15分、得意げな隼が指を指す先に、『彼女』はいたのだ。


「もしかして、あれ?」

 拓磨が、怪訝な顔を隼に向ける。

「そう。あ、もうみんな来ている。おーい!」

 道の先でたむろしている数人の少年に、隼は手を振る。

 それは、薄汚れた白っぽい服を着ており、腰まで伸びた髪は色がくすんでおり、茶色っぽく見えた。

 見た目は人間の女の子と同じ。年の頃も、多分拓磨と同じぐらいだと思う。

 大きめの瞳を持つそれを、拓磨が人間と決定できなかった特徴が、その頭部にあった。

 茶色っぽい髪の間からちょこんと突き出ている、一対の尖った物。それは、猫の耳のようにも見えたが、『角』であることは拓磨にも分かった。

 角が生えている少女を見た瞬間、何故か、拓磨の心は不思議な感情で満たされる。

 多分、後悔、まだ狸の死骸の方がましだった、ということだろうと、自分で理解する。

 少女の脇に大木が生えており、そこに、飼い犬用の鎖が縛り付けてあり、それが少女の首とつながっており、少女の自由を拘束していた。

 角を除けば、ほとんど人間に見えるからであろうか、そう言う物が鎖でつながれ、自由を奪われていると言うことに、拓磨は奇妙な感覚をうけていたのだ。

「ほーらほらほらほら、チッチッチッ。ワンって言ってみろ」

 少年の1人が、犬にやるように少女に声をかける。

 しかし、少女は鋭い視線で少年を睨み上げるだけで、口は固く閉ざしたままだ。

「何かつまんないなぁ」

 もう1人の少年が周りを物色する。

 その少年が何かを見つけ、目を輝かせた。

 少年の腕と同じぐらいの太さの木の枝。

「ちょっとまってろ」

 少年が、鎖の長さを確認しながら用心深く少女に近づいていき、恐る恐る棒を突き出す。


 ガサッ


 突然少女が動き、棒を払いのける。

 少年はびっくりして跳ね上がり、尻餅をついた。

「あはははははははは」

「ばっかじゃやねぇの? びびってるよ~」

 周りで笑い声が響き渡る。

 しばらくむくれていた少年は、何を思ったか、はね除けられた棒を拾い上げると、スッと、少女の前に立った。

「こいつ、生意気だ!」

 そう言うが早いか、棒を振り上げた。

『ぐっ!』

 ビシッと言う鈍い音と共に、少女がうめき声を漏らす。

 瞬間、拓磨の背筋を何かが突き抜けた。

「あはははははははは」

「『ぐっ』だって~。ばっかじゃねーの?」

「もっとやれ~」

 周りの歓声に、少年は気分を良くしたのか、棒を高々と上げ、

「おいらは桃太郎~っ。鬼は退治するぞ~」

と叫んだ。

「いいぞ~。退治しろ~」

「やっちまえ~」

 再び少年は棒を振り下ろす。

『うっ!』

「あははははは」

『あっ!』

「『あっ』じゃねーぞ、キャンって言って見ろ~」

 だんだん興奮して棒を少女のあちこちに振り下ろす少年。

 少女は、棒が振り下ろされるたびに、うめき声を漏らした。しかし、背を丸めて身体を小さくしてはいるが、その瞳は鋭く、歯を食いしばり、少年を睨み上げている。


 突然、少年の腕が虚空で制止した。



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