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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[第4章]エリス
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(2)中将

 まだ外は薄暗い。

 作戦室で、エミリと湯気の立つカップを傾けていたタケトは、入ってきたエリスの姿を見るやいなや、思わずむせ返る。

 エリスは、白色のカッターシャツに紺色のスカート、黒のハイソックス姿で、作戦室に入ってきたのである。

 慌ててカップを机に置き、呼吸を整えると、タケトは声をかけた。

「中将! 申し訳ありません。すぐに服を用意させます!」

 ――主計科の連中、何やってるんだ!

 タケトは、外に向かって声を上げようとする。

「大佐、必要ない」

 エリスは片手を挙げ、タケトを制止する。

「そういえば、もう学校はないのであったな。うっかりしていた」

 エリスは呟きながら、作戦室の机についた。

 ――うっかりって……

 タケトは心の中で突っ込んだが、とりあえず、服が用意されていなかった訳ではないと判り、安堵のため息をつく。

「まあ、服装など作戦に影響ないであろう。大佐、現在の状況を説明してくれ」

 エリスはタケトを見上げた。

 タケトとエミリは顔を見合わせ、その後、タケトが咳払いをし、説明を始める。

「現在、最前線では一部戦闘が始まっておりますが、中将のシールドがありますので、現時点では極めて優勢。以上です」

「わかった、そうでなくては困るのだ。ただし、敵がどのような策を講じているのか、まだ判断材料が少ない。引き続き、些細なことでも報告してくれ」

 エリスは頷き、机に広げられた地図に視線を落とす。

 いくつかの場所に、三角形のシールが貼られている。

「では、些細なことですが、報告があります」

 タケトが表情を改める。

「何だ」

 地図を見たまま、エリス。

「拓磨少尉でありますが、昨晩、ご指示通り、至らぬながら治療を施したのですが、効果があったのか無かったのか、まあ、あったんでしょうな、今朝の時点では、ほぼ回復しております」

「そうか」

 エリスは、短く答える。

 タケトは、エリスの様子を伺いながら、少しためらいがちに口を開く。

「その……中将は、まだ、少尉のことを、怒っておいでですか?……つまり、その件について……」

 エミリも加勢しようと、口を開きかけたとき、

「少尉の件は問題ない。処罰はもう終わっているのだ。現時点で何も少尉を規制するものはない。もし、その件で少尉が何か気にしているのなら、今まで通りの行動を許可しろ」

 エリスはタケトを見上げ、無表情に答える。

「第一、……私は、怒ってなどいない」

「わかりました」

 タケトとエミリは、ホッと安堵のため息をついた。


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