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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[序章]戦場にて
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序ー4


「そろそろだな」

 最後の移送陣が光に包まれるのを確認し、タケトがエリスを促す。

「始めるか」

 エリスは辺りを伺う。

 木々の間に見え隠れする影。

 業界で言うところの『囲まれた』と言うやつだ。

 しかし、あくまで通常戦闘での話。

「少将。シールドを解いた瞬間に注意」

「わかってる。攻撃に集中してくれ」

 エリスは、タケトの腕をつかんで振り向かせる。

「解ってない! 自分『のみ』を守ることだけに専念してくれ。私には、この場にいる程度の直接攻撃も間接攻撃も、全て対処できる。だが、残念ながら、シールドを解くと同時に、私は科学攻撃を行う。その間、わずかだが、少将を見る余裕が無くなる。攻撃の直後、空路にてこの場を離脱する。それまでは自分で持ちこたえてほしい」

「努力する」

 タケトは剣を抜いた。

 努力……というのは言うまでもない。『自分だけ』を守ることに専念する事についてである。

 タケトの剣をよく見ると、柄の部分に赤色と緑色の宝石のような物が埋め込まれている事がわかる。

 エリスが何かを呟き、手に持っている物を軽く投げた。

 同時に、大量の熱気が押し寄せる。

 忘れていたが、周りは火の海だったのだ。

 エリスが、先ほど作成した、残りの物を空中に向かって投げる。

 放物線を描いてそのまま落下するかと思いきや、青白い光を発しながら、徐々に大きくなり、舞い上がった。

 と同時に、タケトは接近する4以上の気配を察知した。

 1つめ……エリスが振り向いた瞬間に消滅。

 2つめ……タケトの剣の軌道上に入り、上下真っ二つに。

 3つめの攻撃をかわした瞬間、一瞬辺りがまぶしく輝いた。

「飛ぶぞ!」

 エリスに腕を掴まれる。

 がら空きになったタケトに襲いかかる気配。

 しかし、直前でそれは炭化し、眼下へ落下していった。

 というより、タケトが上昇しているのだ。

 気付くと、なにやら赤い板の上に乗っていた。

「うまくいったな」

 タケトはエリスを見た。

 エリスは厳しい表情をしたまま答えない。

 タケトは地上を見て、先ほどの光の意味を知った。

 タケト達がいた地点を中心に、半径数百メートルにわたって、何もなくなっていた。

 文字通り何もないのだ。

 あるべき木も、草も。

「……どちらにせよ、木々はほとんど燃えていた。こうするしかなかった」

 その横顔はからは、エリスの心情は読み取れなかった。

 エリスに声をかけようとしたタケトは、視線の先に異様な物を発見する。

「おい。あれは?」

 タケトの声に、エリスはタケトの視線を追った。

「やはり強すぎたか。いや……」

 エリスが消滅させた領域の外側に、自然の物から逸脱した赤黒い空間が出来ており、影がそこに向かっていた。

「先ほどのエネルギーを利用して、空間を歪ませたな。……と言うことは」

 エリスは懐から先ほどの紙を取り出した。

「ちょっと揺れるぞ」

 エリスは急降下し、狙いを定める。

 影が慌ただしく、空間の歪みに向かっていく。

 エリスが右手を動かした。

 同時に、空間の歪みの部分と影との間に白っぽい光の壁が出来る。

 影が白い壁の前で立ちつくす。

 やがて、赤黒い空間が景色の色を取り戻してきた。

「やったか?」

 タケトが身を乗り出す。

 赤黒い空間が完全に消え、白い光も消えた後には、何も残っていなかった。

「しまった!」

「ん?」

 状況が呑み込めていないタケト。

「あっちは囮だ。なんと言うことだ」

「どういうことだ?」

 タケトの問いに、エリスは一呼吸の後、うめくように言った。

「陽界に流出させてしまった」

 そのことがどういう意味を持つのか、タケトにも理解できた。

「こりゃ、左遷どころじゃなくなりそうだな」

「いずれにせよ、ここでは何も出来ない。一旦国に帰ることにする」

 エリス達は、現場を後にした。


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