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下駄箱に上履きを入れると、千紗は早足で校舎を出る。
哀愁を漂わせる音楽が流れる校舎は、セピア色に染まり、なんだか不思議な気分だ。
千紗は、ふう、と大きなため息をついた。
この時間になると、ほとんど生徒の姿はなく、千紗を含め、まじめに部活動に励む生徒が下校するのみである。
何がどうと言うことではないが、千紗は、なんだか、心にぽっかりと穴が開いたような、虚無感にさいなまれていた。
拓磨と別れたことは、後悔していない。
まあ、先ほどのかなみと言う子が、やたら拓磨と一緒に行動しているように見えるが、それは、単に千紗が過剰に反応しているだけだと思う。
だから、そのことが原因ではない、と、千紗は自分に言い聞かせる。
しかし、今までは気づかなかったが、今日のように、さくらがいなく、1人で下校時刻に学校を後にするという瞬間、なんだかやるせない気分になってしまう自分がいた。
「あ~あ、つまんない。学校なんか、無くなっちゃえば良いのに……」
長い影を落としながら、足早に校門へと向かう千紗。
家路へと急ぐ千紗が、気づくことはなかった。
その影が、一瞬立ち止まり、小走りで追いかけ、何事もなかったかのように、再び千紗とともに、家路についたことを……。




