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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[第3章]はじまり
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(1)-5


 五感のすべてを世界から切り離して、どのぐらい経っただろう。気づくと、辺りは薄暗くなっており、草むらの虫の鳴き声が拓磨の耳に入っていた。

「少尉」

 ビクッとして声の方を見上げると、エリスが屈んで手を差し伸べていた。

 拓磨がビクッとしたのを、そして、手を差し出すのを一瞬躊躇したのを、エリスは見逃さなかった。

 無表情だったエリスの顔に、複雑な感情が見え隠れする。

「か、彼らは我々の敵だ。予想通り、〈鍵〉を持っている少尉を狙っていた。ここで私の情報が漏れると、少尉や部隊の安全が脅かされる。だから、ああするしかなかった」

「……」

 エリス達の常識では当たり前、最善の選択を行っただけのことだ。それが、拓磨達の常識とは異なるだけ。

 頭では解っているが、心がついてこない。拓磨が、絡まる思考を整理しながら返事をする言葉を選んでいると、エリスは目を伏せ、慌てて付け加えた。

「そ、その、つまり……すまなかった」

 その表情に、拓磨は今まで感じたことの無い不思議な感覚で満たされる。

 ――こんな表情を、タケトやエミリは見たことがあるのだろうか

 何に対して、『すまなかった』のかは、解らなかったが、その表情と言葉に、拓磨は自分の心の中の闇が晴れていくのを感じた。

 大体、『中将』が『少尉』に謝ることなど、エリス達の常識では、あり得ないに違いない。少なくとも、エリスは拓磨に対しては気を遣ってくれているのだろう。

 拓磨はエリスの手を掴み、そのまま引き起こされる。

「うん? でも、少なくとも、僕のための行動だったのだろ?」

 拓磨は、笑みを浮かべた。

 エリスは、一瞬ホッとしたような表情を浮かべ、一瞬の後無表情に戻り、

「少尉、時間がない。通信途絶させてから間が空きすぎた。……急いで帰るぞ」

とだけ言った。

 先ほどのパネルが消滅した事が部隊に及ぼした意味は、拓磨が帰投した際に知ることとなる。


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