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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[第3章]はじまり
22/64

(1)-2

「!」

 エリスはたまらずバランスを崩し、全体重を拓磨に預ける。拓磨は、予想済みだったらしく、拓磨もろともつんのめることはなかった。

 はっとなり、体勢を整え拓磨を呼ぼうとしたエリスは、急ブレーキの原因を理解する。

 進行方向に、道をふさぐ形で道路に立ちはだかる男性2名。

 黒で統一された服装、金色のボタンは外れており、その下には赤色のシャツが見える。そして、拓磨や他の生徒とは異なる、カラフルかつ斬新な髪型。

「よぉう! 仲がいいじゃねえか」

「仲がいいじゃねえか」

 エリスが分析する中、その男性が、それぞれに口を開く。

 あの骨格からすると、この声は明らかに不自然だ。何故、わざわざ声音を変える必要があるのだろうか。

 それに、明らかに健常者であるのに、あの身体の動きは不自然だ、などとエリスは考えた末、相手を『敵、或いは準敵対的対象』と結論づけた。

「おま……!」

 エリスが誰何の声を上げようとした瞬間、拓磨の腕が伸び、口を塞がれる。エリスの中を様々な感覚が突き抜けるが、とりあえず口を閉じる事に成功する。

 (エリス)

 拓磨が囁いた。

 (な、何だ)

 (絶対によけいなことを言わないで。エリスは知らないと思うけど、あれは、こちらで言うところの『不良』ってやつだから)

 (……)

『不良』と言う単語が、エリスが学習した、陽界での学生生活の知識でヒットしたことを拓磨は知らない。


 〈不特定多数を相手にするその人種は、往々にして気まぐれで動く。たまたまその網に引っかかってしまうと言う不幸に直面した場合、真面目な学生が取るべき手段は、1つ。とにかく、相手を刺激せず、やり過ごすことだ。言うなれば、野良犬に狙われたときと同じ。なお、それらは、自分達の強さを誇示する場合がほとんどで、相手が怯えていれば、満足し、それ以上の危害を加えない。〉


「降りろ!」

 1人が睨み上げながら、大声で拓磨に言う。

 拓磨は黙ったまま顔を強ばらせ、自転車から降りた。

 ――そういうことか。ならば……

 エリスは拓磨の行動を見、自分の行動をシミュレーションする。

「女もだ!」

 男の叫びに、エリスは身体をビクッとさせ、

「やだ、乱暴しないでぇ」

 少しうわずった声でそう言うと、目を潤ませ、拓磨にぴったりと身体を寄せる。

 男達の口の端が上がることを確認し、エリスは、自分の行動がうまくいったことを確信した。

 (え、エリス? え?)

 しかし、慌ててエリスを見る拓磨の顔は、『彼女』を心配するそれではなく、『まじですか? エリスさん』とでも言いたげな、引きつった笑み。

 エリスは、自分の顔が火照ってくるのを感じた。

 気まずい沈黙が、空間を満たす。

 少しの後、エリスが半眼になり、氷のような視線で拓磨を射抜く。

 (…………少尉、あとで、覚悟しておけ)

 その迫力に、拓磨の顔が別の意味で強ばる。

 笑みを浮かべ様子を見ていた男の1人が、腕を上げた。

 瞬間、エリスは自転車を蹴り飛ばし、拓磨を引き寄せ、そのまま道路に倒れ込む。

「エ……!?」

 拓磨は、手を握ったまま、上に覆い被さる形で伏せるエリスに、焦って声をかけようとするが、言葉を呑み込んだ。


 ジジッ


 拓磨の視線の先で、青っぽい光が、一瞬遅れて降りてくるエリスの髪の一部を焼き、通り過ぎる。

 独特の嫌な臭いが拓磨の鼻腔をついた。

 (少尉! 『不良』とは、あのような攻撃をするものなのか?)

 耳元で囁かれるエリスの声に、拓磨はめいっぱい首を横に振る。

 そんな話は聞いたことがない。

 考えにくいが、可能性があるとすれば……、拓磨は必死に考える。胸の辺りから、エリスの激しい鼓動が直に伝わってくるが、そんなことに緊張する余裕は、今の拓磨には無かった。


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