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第十三科学系戦術師団  作者: みずはら
[序章]戦場にて
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序ー1

「ごめ~ん。おまたせっ」

 ウーンと言う機械が発する独特の低音が木霊する薄暗い空間に似合わず、底抜けに明るい声を出しながら、比較的小柄な少女は、それでも自分の胸ぐらいしかない戸口から顔を出し、水色の髪の毛を気にしながら注意深く通り抜けると、とんっと床に着地する。

「ふふっ、10.0ねっ。……って、キサ? どうしたの?」

 薄暗い室内でも判る明るいブラウンの髪を持つ少女は、首を傾げ、怪訝な視線を向けた。

 視線の先では、多数の青白く光るモニターが壁を埋め尽くし、細かい文字を耐えることなく変化させている。その下に、丁度背を向けるような格好で、キサと呼ばれた黒い髪を背中まで伸ばした少女が椅子に座ったまま、前屈みで佇んでいた。


「ねえってばー、任務初日でお腹でも痛くなった?」

 少女は笑みを取り戻し、キサの下へと歩みを進める。

 少女の呼びかけに、しかし、キサは反応しない。

「キサ? 大丈夫?」

 少女は、キサの異変に気付いたのか、歩みを早め、およそ三メートルほどの距離を経て、キサの脇に立ち顔をのぞき込んだ瞬間、息を呑む。

「ちょっ! キサ? これ……」

 少女の視線は、キサではなく、キサがぼんやりと見つめているモニターに固定される。

 画面には、小さな三角形や、ブロックのような形のシンボルが一定の規則性を持って並んでおり、緑色や青色でその存在を「Friend」と示していた。

 その周りを、黄色で一点鎖線が書かれており、「border」と表示されている。

 その、黄色い線を取り囲むように、赤色の点滅している三角形が所狭しと点滅し、「Unknown」と表示されている。


「やばいじゃん! キサ、連絡は――」

 キサは、しかし、黒い髪を揺らしながら、ゆっくりと少女を見上げ、ぼんやりとした視線を送った。

「かしてっ! もうっ! これだからゆとりはっ! 急がなきゃ! 第一級の非常事態だわっ!」

 少女は、キサから操作卓を奪うようにして受け取……る姿勢で硬直し、僅かの後、トサッと言う軽い音とともに、キサの足元に崩れ落ちる。

「こちら情報科、定時連絡。……異常なし」

 操作パネルに向かってそう言い、キサは足元でピクリとも動かない少女を見下ろすと、抑揚のない声でつぶやいた。

「……そう、すべて計画通り」

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