卒業旅行日記(十二日目)キュランダ観光。そして失敗、事件、そして感動の連続、楽しかったラフティング!(その2)
この瞬間、滝壺では泳ぎの上手な人でも溺れる、という話が頭の中を駆け巡った。水が落ち込んでいるところというのは、下の岩や砂がえぐられていて水深がとても深い。しかも、落ち込んでいる水の勢いで周りの水の流れはものすごい勢いで下へ向く。これはまずい。大変な事態であることに気が付いた。とりあえず幸信を助けるように、マークに伝えないと。マークはひっくり返っているボートを元に戻し、そこに幸信は手をかけ、何とかボートに這い上がった。助けるときは、ボートを近づけて直接助け上げることはできないようだ。マーク自身も危なくなるのだろう。助ける側が危険を冒さないのは、二次災害を防ぐ救助活動の鉄則だ。幸信は自分のボートに乗り、マークも岩場から離れたところにいたが、まだ俺は取り残されたままだ。さっきは僕と幸信が乗っていたボートがあるためにある程度マークも近づけたようだが、今度はマークもすぐにこっちへ来ることはできないようだ。さっき掴まっていたボートは幸信救助のため離れたところにあり、自力で浮いていなければならない。しかし、水が勢いよく岩の下に向かって流れているため、何回か吸い込まれそうになった。岩に手をかけ、立ち泳ぎで浮いたり沈んだりしていたが、かなり水の勢いが強いため、体力が尽きるのは時間の問題だ。マーク、助けに来てくれよ。そう思った。しかしマークと僕の距離が離れていて、マークが来るまで体力が持ちそうもない。ちょっと弱気になったが、極限になるほど、結構昔から冷静になれる方である僕は(うぬぼれ)、とりあえずどう考えても今、自分にできることは限られているのだから、できることをやることに集中しようと考えた。余計なことを考えても、何にもならないのである。
岩を押して、進行方向に思い切って泳いでいこうとした。しかし、手を岩から離した瞬間、川に吸い込まれ、一瞬川の中に沈んでしまった。中途半端じゃだめだ。手を精一杯伸ばしても、水は自分を強く引っ張っている。何回か腕を伸ばしたり戻したりしたが、タイミングの違いで岩から離れそうな時があった。今だ!!思い切って腕を伸ばし、自分はとりあえず岩から少し離れたところにいる。このチャンスを逃してはいけない。すかさず平泳ぎで岩を離れ、進行方向の流れになる場所に出た。やった!心に余裕ができて、笑った。マークの横に泳いで行った。「Are you a fish?」と、心配していたのに君は余裕な表情でこっちに来て、全く。心配して損した。そう言いたそうな、安堵と呆れたのが合わさったような顔で言った。「Yeah! I'm a fish!!」俺も言い返した。
再び俺と幸信はボートを漕ぎ始めた。「Hey! Crazy guys!!」マークは、我々に対し、相変わらずの言いようである。
穏やかに流れが落ち着いて、先に進んでいる仲間から岸に上がり始めた。ラフティングのツアーもいよいよ終盤だ。
我々もようやく岸にたどり着いた。ボートをかついでバスのとこまで運び、皆で写真を撮った。
スイス人の人が声をかけてくれた。「Did you like it?」僕は、答えて言った。「Yeah! I want to do once more.」彼は、呆れたように笑った。
マークとは、子供の時のようにはしゃいで、じゃれて遊んだ。とても楽しかった。
マークの運転する帰りのバスに乗った。日が落ちようとしている。夕方の、何となく物寂しい感じを漂わせている。映画のワンシーンのような夕焼けに空が染まり、いかしたちょっと渋めの音楽が流れ、黄昏時の独特の雰囲気につかる。マークとももう少しでお別れかと思うと、ちょっと寂しい気分になる。マークが後ろに振り返った。笑ったら、笑い返してくれた。
マークは日本人のツアー客から日本語を学んだらしいが、汚い日本語を教えているツアー客が多いらしい。俺は日本人として、もっときれいな日本語を知って欲しかった。
ホテルに着いた。俺はマークのところへ駆け寄った。
「I want to tell you Japanese good word,Ichigo Ichie.(一期一会)」
「Ichigo Ichie?」 「Yeah! Ichigo Ichie.」
「What does it mean?」
「It means... maybe,we can't meet any more.But,this is good meeting.」
「Thank you.」「Thank you.」
自分が正確な英語を使っているのかわからなかったが、俺の言いたいことはこれ以上ないくらい正確に伝わった。人間同士の交流は大切にしたい。とてもいい気分だ。
続いて沖亜もこちらへやってきた。中指を立てて言った。「I know only one word...Fuck'n good-bye!」幸信、浩圧も続いて同じように言って、バスを降りた。マークはきょとんとしていた。全く、俺の気持ちをこうもあっさりと踏みにじってくれるとは。
マークは上を向き、帽子を顔に被せ、少ししてから大声で笑った。最後までやってくれたよ、マークにしてみればそんな感じだったのだろう。
ブ・・ッ!ブッブ・・・ッ!!辺りに響くように警笛を大きく鳴らし、「Good bye!!」と言った。俺も大きく手を振り、「Good bye!!」と言った。バスは走って行った。何か、こう、映画のワンシーンに浸っているような感じだった。ほんのちょっとしたきっかけで人と出会い、すぐに仲良くなることができ、またすぐ別れなければならない。小さい頃からの引っ越しでこんなことには慣れているはずだったが、あまりに突然出会い、あまりに早いお別れだった。
この後、ちょっと街に出たりホテルに戻ってトランプをしたりしたが、すぐに眠くなって、比較的早く就寝した。一日予定が入れられるのは、明日を残すのみ。明後日は帰国日だ。




